研究課題/領域番号 |
23651053
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大嶋 雄治 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (70176874)
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研究分担者 |
島崎 洋平 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (40363329)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | PFOS / 結合タンパク質 / 魚類 / 血液 |
研究概要 |
目的;ペルフルオロ(オクタン-1-スルホン酸:PFOS)はその高蓄積性からワシントン条約のPersistant Organic Pollutants (POPs)に指定され、我が国でも第一種特定化学物質に指定されたその使用が厳しく制限され,検鏡中の挙動を監視しなければならない。今後も人や野生生物への暴露により血液への蓄積が予想されるため、その影響が懸念される。しかし、PFOSが血液に高濃度に蓄積する機構は未だ明らかでない.本研究ではPFOSの血液蓄積機構の解明とその毒性評価を目指し以下の実験を進めた.PFOS測定系の検討: 始めLC-4重極MS/MSを用いギ酸系の溶離液で分析を検討したが,吸着等が起こり,測定には至らなかった.よって,溶離系を変更し満足できる検量線を得た.しかし,共用の機器であるため,溶離系を頻繁に変更することが難しく,LC-Iontrap-TOFMSに機材を変更して再検討を行った.その結果,十分な感度と直線性を得ることができた.ヒラメPFOS結合タンパク質(PFOS-bp)の精製:ヒラメにPFOSを10 mg/kg腹腔内に投与して、3日後全血液を採取した,得られた血液の一部硫安塩析により分画を行い、PFOSの濃度が高いタンパク質画分を可溶化後,ゲルろ過を行った.しかしPFOSは検出されなかった.PFOSとタンパク質の結合が弱く,塩析およびゲルろ過中に遊離するものと結論した.よって,血漿を直接ゲルろ過し,PFOS結合部画分を追跡している.今後結合タンパク質の精製,アミノ酸解析,遺伝子解析を進める.ヒラメPFOS結合タンパク質部位の特定:ヒラメにPFOSを10 mg/kg腹腔内に投与して3日後,血液,肝臓,筋肉,表皮粘液を採取した.測定系が確立されたので,これから各組織のPFOS濃度を測定し特異的蓄積部位の解明を進める.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
PFOS結合タンパク質を効率的に精製するため最初に塩析を行い,その後ゲルろ過を実施した.しかしPFOS結合画分が消失してしまった.原因の一つとしてPFOSとタンパク質の結合が弱いことが考えられたため,直接ゲルろ過をすることに変更した. またPFOSの測定にはLC-MSが必要であり,外部機関に委託を予定していた.しかし,感度が悪く分析が思うようにすすまなかった.大学内の共通機器LC-TOFMSを持ちて分析することにかえざるを得なかった.このため,分析プロトコルの変更と確認に手間取り,時間を要したため実験がやや遅れてしまった.
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今後の研究の推進方策 |
血漿を直接ゲルろ過して精製を行う.また大学内のLC-TOFMSを使った測定系を確立したので,これからPFOS結合タンパク質の精製が進むと予想される.PFOS結合タンパク質を分取しN末アミノ酸配列の解明により遺伝子が同定されれば,その分子基盤情報を解析する.遺伝子が解明されれれば,直ちにカイコーバキュロウイルスシステムを用いて組替え体タンパク質の大量分取を行う予定である.またメダカナノインジェクション法は確立ずみであり,毒性評価を平行して予定通り進める.
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度は,分析系の立ちあげに時間を要したため予算も一部持ち越しをせざるを得なかった.測定系が確立したので,持ち越し部分も含めて今年度中に予算の消化を行い,実験を予定通り進めて行く予定である.詳しくは,ヒラメのPFOS-bpを単離精製した後全遺伝子配列を決定し、遺伝子組換え体をカイコで産生させ、大量分取する。得られた組換え体に対してPFOSその他の物質との結合試験を行い、その機能を確認するとともに、脱毒剤を検討する。また、メダカ胚にPFOSおよびPFOS-bpをナノインジェクションしてPFOSの毒性とPFOS-bpの解毒機能を検証する。これらの実施項目に対し消耗品としてシーケンスキット,DNA抽出キット,分析関連消耗品,他一般消耗品等を支出する予定である.
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