研究概要 |
【方法】養殖トラフグ, Takifugu rubripes(約500 g、19個体)を、ろ過海水を通水した500 L水槽で、自然日長、無給餌で2日間馴致した。トラフグにPFOS-カリウム塩 in DMSO/0.9% NaCl を0.5 mg/kg b.w.となるように腹腔内投与した後、0、1、3、7、14日目に4個体ずつサンプリングし(14日目のみ3個体)、血液、肝臓、筋肉、生殖腺、皮膚、体表粘液を採取した。血液は一晩冷蔵静置後、遠心分離し血漿と血餅に分離した。得られたサンプルはアルカリ分解、固相抽出を行い、LC-TOF-MSによってPFOS濃度を測定した。また、PFOS無処理のトラフグ血漿を硫安分画後、透析膜を用いて平衡透析法により、PFOSとの結合試験を行った。さらに、曝露14日後の血漿を用いて硫安分画をし、各画分のPFOS濃度を測定するとともに、SDS-PAGE、N末端アミノ酸配列解析を行い、結合タンパク質の探索を行った。 【結果】投与試験の結果、血漿中PFOS濃度は1日目に728 ng/mLと急激に増加し、14日目でも861 ng/mLであった。肝臓と体表粘液は経日的に増加し、14日目ではそれぞれ278 ng/g、690 ng/gとなった。しかし、筋肉、生殖腺、皮膚ではほとんど増加しなかった。体内に取り込まれたPFOSは、血漿中に蓄積され、一部は肝臓中に蓄積され、徐々に体表粘液中に排出されると考えられた。また、PFOS曝露トラフグ血漿の硫安画分(塩濃度55-80%)で高濃度のPFOSが検出され、結合試験の結果と一致したことから、本画分にPFOS結合タンパク質が存在することが示された。さらに、SDS-PAGEとN末端アミノ酸配列解析の結果より、アポリポプロテインA-1がPFOS結合タンパク質である可能性が示唆された。
|