研究課題/領域番号 |
23651055
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
小島 周二 東京理科大学, 薬学部, 教授 (90119579)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ナノ粒子 / シリカ / 活性酸素(ROS)産生 / ATP / マウス腎メサンギウム細胞 |
研究概要 |
生体内に取り込まれたナノ粒子は血液やリンパ液により全身へ移行し、肺、肝臓、腎臓、脾臓などに集積することが明らかとなっている。そこで23年度は当初の計画に従い、肺細胞を用いて検討を開始した。しかし、実験上の問題から腎細胞であるマウス腎メサンギウム細胞(mMC)にかえて、ナノシリカ粒子(nSP30,粒径30nm; nSP70, 粒径70nm; nSP300, 粒径300nm)暴露による ROS 産生をATP・ATP受 容体シグナルの観点から検討した。 その結果、mMC において、nSP70 処置により顕著な細胞死が誘導された。nSP70 処置による細胞死はATP 分解酵素である Apyrase により抑制された。また、nSP70処置により細胞内 ROS 産生及びカルシウムイオン濃度が顕著に増大したが、これらの変化も Apyrase により有意に抑制された。さらに、mMC 細胞内には ATP 含有小胞が観察され、これより nSP70 処置10 分後から細胞外への ATP 放出が生じた。 本研究より、mMC にnSP 70を処置すると、細胞外へ ATP が放出され、その後、細胞内カルシウムイオン濃度及び ROS 産生量の増大が生じ、細胞死が誘導されるというシリカナノ粒子の細胞毒性メカニズムが示唆された。そこで次年度では、23年度に得られた結果を他のナノ粒子を用いてさらに詳細に検討すると共に、ヒト皮膚表皮細胞 HaCaT 細胞等を用いてATP・ATP受容体シグナルを介した ROS 産生機構を確認する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シリカナノ粒子暴露により、細胞よりATPが遊離する、またROSが産生されることが確認された。さらに、これらの現象は、いずれも ATP 分解酵素処理により抑制されたことから、ATP・ATP 受容体シグナルを介した ROS 産生機構を示唆するものと言える。 当初使用予定であった、細胞はシリカナノ粒子に応答性が悪い為に、マウス腎メサンギウム細胞に変更したものの、当初の目的は充分達成できたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
24年度では、23年度に得られた結果を他のナノ粒子を用いてさらに詳細に検討すると共に、ヒト皮膚表皮細胞 HaCaT 細胞等を用いてATP・ATP受容体シグナルを介した ROS 産生機構を確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
全ての研究費を一般試薬、抗体等の生物試薬、細胞培養試薬等に使用する。
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