マウス腎メサンギウム細胞に粒子径 30、70、及び 300 nmのナノシリカ粒子(各々、nSP30、nSP70 及び nSP300)を暴露し、ATP・ATP 受容体シグナリングを介した活性酸素産生(ROS)産生機構を検討した。その結果、nSP30 と nSP70 のシリカ粒子で有意な細胞からの ATP 放出、 カルシウムイオンの細胞内流入、および ROS 産生がみられ、ATP 分解酵素(apyrase)処理によりこれらの現象が抑制された事から、ナノ粒子による ROS 産生に ATP・ATP 受容体シグナリングの関与が示唆された。そこで、本年度では前年度で得られた結果を確認する目的でヒト皮膚上皮 HaCaT 細胞でも検討した。ナノシリカ粒子(nSP)により誘導されるAT Pシグナリングを最も細胞傷害性が大きい粒径 30 nm の nSP30 について HaCaT 細胞を用いて検討した。nSP30 を細胞に暴露すると、細胞外にATPが有意に放出され、細胞内カルシウムイオン 濃度と p38 MAPK 活性の上昇がみられた、最終的にはアポトーシスに至った。これらの変化は nSP による ATP 分解酵素である apyrase 処理により抑制された。 以上、nSP30 暴露により ATP 放出、その後のP2 受容体の活性化(ATP・ATP 受容体シグナリング)による ROS 産生が細胞死に繋がる新規メカニズムが見いだされた。
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