研究課題/領域番号 |
23651058
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
田中 俊逸 北海道大学, 地球環境科学研究科(研究院), 教授 (30142194)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | インテリジェント吸着剤 / アルギン酸ゲルビーズ / 浮きと重り / 微細気泡 / シリカバルーン |
研究概要 |
様々な汚染状況に対応し、汚染物質を除去するための吸着材として、新規な機能を有するインテリジェント吸着剤の開発が必要不可欠となっている。このような吸着剤の一つとして、平成23年度は主に一旦水に沈むが、一定時間の後に浮き上がる吸着剤の開発を行った。「浮き」として微細気泡、「重り」として炭酸塩をアルギン酸ゲルビーズの中に同時に内包させることによって、目的の吸着剤の作製を行った。最初、「浮き」よりも「重り」の量を多くすることによって吸着剤は水に沈むが、水中で重りである炭酸塩が溶解することで、重りが徐々に失われ、ゲルビーズの比重が水より軽くなった時点で吸着材は浮き上がる。「浮き」と「重り」の比率を変えることによって、沈んでいる時間も制御可能となった。「浮き」としての用いる微細気泡は、炭酸水素ナトリウムと有機酸との反応によって生じる二酸化炭素ガスによって作製しているが、二酸化炭素は水への溶解度が大きく、またpHによって溶解性が変わることから、一旦浮いた吸着剤が再度沈むこむなどの問題点を有することが判明した。そこで、より安定な「浮き」として火山性シリカを高温処理したときに生じる、中空体であるシリカバルーンを森いることについて検討を行った。しかし、市販のシリカバルーンそのものは、最初は水に浮くものの徐々に沈むこむ現象が見られた。これは、シリカバルーンの中空部に徐々に水が入り込むことによると考えられた。そこで、シリカバルーンの表面を疎水性の物質で修飾することによって、水との濡れを抑えることによって長時間にわたって浮き続ける安定な浮きとなることが判明した。シラスバルーンを「浮き」として用いたアルギン酸ゲルビーズによっても一旦は沈むが、一定時間後に浮き上がる吸着剤の開発に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「浮き」と「重り」を用いて、吸着材の比重制御を行い、一旦は水に沈むが、一定時間後に浮き上がる吸着剤の作製に成功した。浮きとして微細気泡と、シラスバルーンを用いる2つの系について検討し、どちらも一応の目的を達成しうる吸着剤を開発することができたので、おおむね順調に進行しているといえる。また、吸着体としてイオン交換体を用い、重金属イオンとの交換によって吐き出されるプロトンが、ゲルビーズ内のpH変化をもたらす可能性を得ることができ、吸着の完成によって浮き上がる吸着体の開発についての基本的知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
1)現時点で得られたゲルビーズ吸着剤は、浮き上がる時間に比較的大きなばらつきを有している。今後はゲルビーズの精密な比重制御を行うことによって、ほぼ同じ時間に浮き上がりが起こるようにするための工夫を行う。2)酵素反応を用いたガス発生を利用して浮き上がる吸着体の開発を行う。3)一旦は沈むが、一定時間後に浮き上がることの利点を示すために、撹拌できないような水域をモデルとして、汚染物質の除去効率の評価を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していた酵素反応によって生じる気体を「浮き」とする実験が、今年度は他の実験に時間がかかったため実施できなかった。従って、この実験のための実験補助の謝金や、実験費が節約できた。その分はその他の「浮き」に関わる実験のための物品費に充てられたが、結果として酵素を購入する分が未使用となった。次年度は酵素を用いる実験が行われることから、未使用分は酵素の購入費として使用する予定である。
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