研究課題/領域番号 |
23651062
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
小川 幸春 千葉大学, 園芸学研究科, 准教授 (00373126)
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キーワード | 環境技術 / 環境対応 / 人間生活環境 / 建築物緑化 / 高分子構造・物性 |
研究概要 |
本研究は,高層建築物の全面緑化などを容易に実現するための自立型植物栽培用担体の開発を目的とする.具体的には,物質の遅延透過性・保水性を持ち,かつ植物の生育・維持に必要な栄養素をすべて含んだゲル状物質積層体による栽培担体の開発を目指している.平成24年度は,土壌代替となるゲル状物質に添加剤を混入した際の物質浸透特性を調査,解析するとともに,ゲル素材の力学特性および微細構造特性との関係を検討した.【材料および方法】基準ゲル化剤として昨年度に続き寒天粉末を用いた.寒天濃度は1.0(w/v)とし,添加剤として水溶性のペクチンおよび不溶性のリグニン代替物として脱脂ココア粉末を用いた.各添加剤は寒天ゲルに対して重量比で1~2%となるよう調製した.ゲル状物質は加熱調製ののちコルクボーラを用いて直径2cm,高さ2cmの円柱状試料とした.試料の力学的特性測定にはクリープメータ(山電)を用いた.微細構造観察には試料を凍結乾燥後,走査型電子顕微鏡(日立)を用いた.また物質浸透性を確認するため試料底面が5%KCl溶液に接するよう静置し,0.5,1,4,8および12時間放置後に各試料中のカリウム含有量を測定した.【結果および考察】ペクチン添加ゲルおよびココア粉末添加ゲルいずれも,添加濃度の増大とともに硬さが減少し,凝集性が増加する傾向を示した.しかしながら付着性についてはペクチン添加ゲルでは濃度増大とともに増加する一方,ココア粉末添加ゲルでは逆に減少傾向を示した.これらの結果はゲル状物質の力学特性や物質浸透性が添加剤の種類,量によって制御可能であることを示唆する.そこでそれらに直接関与する微細構造を確認したところ,ココア粉末添加ゲルの微細構造は添加濃度に関わらず比較的均一である一方,ペクチン添加ゲルでは濃度増大に伴う構造体の縮小が確認された.これらの構造はカリウムの浸透性とも関係していた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度の結果と対照するため,寒天を基準ゲル化材とみなして研究を進めた.このため,グルコマンナンやポリアクリル酸など他のゲル化剤に対する実験に遅れが生じている.
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今後の研究の推進方策 |
本研究のキーポイントはゲル素材積層体の物質透過性および力学的特性の把握であることが明らかになったため,様々なゲル化剤の浸透性に関与する物性や構造特性などに焦点を合わせて研究を推進する.それらの研究と同時進行で植物の生育に適切なゲル積層体の構造を明らかにする.さらにゲル積層構造体のより容易な作製法,例えばグラフト処理の適用による直接ゲル化法などを検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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