近年,生体への悪影響が問題視され始めているナノ粒子の環境への流出を防ぐため,その分離除去方法の確立が急務である.そこで本研究では,アニオン性高分子であるsodiumpolyacrylate(SPA)を保護剤として合成した白金(Pt)ナノ粒子をモデルナノ粒子とし,感温性を有するN-isopropylacrylamide(NIPA)と正電荷を有するvinylbenzyl trimethylammonium chloride(VBTA)を共重合した感温性高分子ゲル(NIPA-VBTAゲル)を吸着剤として用いることで,温度スイング操作によるナノ粒子の吸着分離を,ナノ粒子が再利用できる形で実現するプロセスの構築を目的としている. 本年度は,昨年度に合成し,感温性の発現を確認したNIPAゲルおよびNIPA-VBTAゲルを用い,相転移温度以下の298 Kとそれ以上の333 KにおけるPtナノ粒子の吸着挙動について検討を行った.その結果,NIPAゲルはいずれの温度でもPtナノ粒子をほとんど吸着しないこと,NIPA-VBTAゲルはいずれの温度でもPtナノ粒子を吸着できるが,その量は333 Kの方が大きいことが分かった.この結果を受け,NIPA-VBTAゲルを用いたPtナノ粒子の温度スイング吸着実験を実施したところ,NIPA-VBTAゲルは333 KでPtナノ粒子を吸着し,298 Kに降温すると吸着したPtナノ粒子の一部を脱着することが明らかとなった.さらに,温度スイング操作を繰り返すことでこのようなPtナノ粒子の吸脱着を繰り返し行えることにも成功した.
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