研究課題/領域番号 |
23651066
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
佐藤 一則 長岡技術科学大学, 工学部, 教授 (20143828)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 重金属イオン捕集 / 光電析 / イオン交換吸着 |
研究概要 |
本研究では水分解に高い活性を示すBaTi4O9光触媒酸化物粒子にα-FeOOH微粒子を分散析出させることによるPb(II)イオン除去効果とその光電析反応析出メカニズムについて検討した。BaTi4O9粒子は固相反応法により合成した。合成したBaTi4O9粒子と硝酸鉄を所定比で混合した溶液とKOH溶液における水酸化物粒子沈殿反応によりBaTi4O9粒子表面にα-FeOOH微粒子を分散析出した試料を作製した。作製試料についてPb(II)イオン水溶液に対する吸着特性を評価した。光電析作用によるBaTi4O9のPb(II)イオン除去能はα-FeOOH微粒子の分散析出によって著しく向上した。カットフィルターを用いた照射波長を制限したPb(II)イオン除去試験の結果から、α-FeOOH-BaTi4O9複合粒子の光吸収はBaTi4O9に起因することを示した。吸着試験後の試料の走査型電子顕微鏡によって観察された二次電子像より、BaTi4O9単体粒子表面に比べα-FeOOH-BaTi4O9複合粒子表面には多くの析出物を認めた。この析出物はエネルギー分散型X線元素分析により鉛を含む物質であることを確認した。α-FeOOH添加による除去能の向上はBaTi4O9粒子表面に存在する針状結晶のα-FeOOHではなく、微細なα-FeOOH微粒子が除去能の向上に寄与していることを見出した。この除去能の向上はα-FeOOHが光励起によって生成したホールと電子の電荷分離促進に起因していると考察した。Pb(II)イオンの光電析後の水溶液pH変化とPb(II)イオン除去量の定量的関係、およびアルゴン雰囲気下でのPb(II)イオン除去試験の結果から溶存酸素が反応に寄与していることを見出し、光電析反応メカニズムを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
BaTi4O9酸化物がTiO2よりも光電析により高い鉛イオン捕集能力を示すことを見いだし、さらにその光電析反応メカニズムをαオキシ水酸化鉄微粒子の分散担持状態と関連づけて明らかにすることができた。これらの研究結果は、光電析反応解析、高分解能走査電子顕微鏡観察、および特性X線元素分析等によって見いだしたものであり、概ね当初の予定どおりの研究計画によって進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
目的とする重金属イオン捕集能に対する妨害重金属イオンの影響を明らかにして、選択性の優れた捕集材料の開発を目指す。そのために、分散担持する水酸化物微粒子の選択と分散担持形態を、高分解能走査電子顕微鏡観察、特性X線元素分析、表面電位測定などによって明らかにしていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
主として、重金属イオン捕集実験に必要な消耗品と研究成果の学会発表、及び論文投稿料に使用する予定である。
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