本研究では、水分解に高い活性を示すBaTi4O9及びCeO2系光触媒酸化物粒子にα-FeOOH微粒子を分散析出させることによるPb(II)イオン除去効果と その光電析反応析出メカニズムについて検討した。BaTi4O9粒子及びCeO2系粒子は固相反応法により合成した。合成したこれらの酸化物粒子と硝酸鉄を所定比で混合した溶液とKOH溶液における水酸化物粒子沈殿反応により酸化物粒子表面にα-FeOOH微粒子を分散析出した試料を作製した。作製試料について主としてPb(II)イオン水溶液に対する吸着特性を評価した。光電析作用によるPb(II)イオン除去能はα-FeOOH微粒子 の分散析出によって著しく向上した。カットフィルターを用いた照射波長を制限したPb(II)イオン除去試験の結果から、α-FeOOHを分散させた複合粒子の光吸収は光触媒酸化物に起因することを示した。吸着試験後の試料の走査型電子顕微鏡によって観察された二次電子像より、光触媒酸化物単体粒子表面に比べて複合粒子表面には多くの析出物を認めた。この析出物はエネルギー分散型X線元素分析 により鉛を含む物質であることを確認した。α-FeOOH添加による除去能の向上は光触媒粒子表面に存在するα-FeOOHのイオン交換吸着ではなく、生成ホールによるPb(II)イオンの酸化酸化作用に基づく除去能向上に寄与していることを見出した。この除去能の向上はα-FeOOHが光励起によって生成したホールと電子の電荷分離促進に起因していると考察した。Pb(II)イオンの光電析後の水溶液pH変化とPb(II)イオン除去量の定量的関係 、及びアルゴン雰囲気下でのPb(II)イオン除去試験の結果から溶存酸素が反応に寄与していることを見出し、光電析反応メカニズムを明らかにした。
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