炭酸ガス分離法として、蒸気によるCO2脱着操作を付与した温度スイング吸着法(TSAサイクル)について、その有効性を実験により評価した。まず、蒸気脱着を付与したTSAサイクルと従来型TSAサイクルとの吸着量比較を行った。蒸気脱着を付与したTSAのCO2吸着性能は従来型TSAを全湿度条件で上回った。これより、飽和蒸気によるCO2脱着の有効性が確認できた。しかし、両プロセスとも再生ガス湿度の上昇に伴いCO2吸着量が低下した。これは、脱水工程中(従来型TSAでは脱着工程)の相対湿度の増加により吸着材層内の脱水が不十分となるためである。 蒸気脱着型TSAの1サイクルあたりの吸着量は吸着等温線から計算される理論吸着量に対して小さい値を示した。これは、蒸気の過剰投入ならびに脱水工程の昇温幅が小さいことによる脱水不足が原因であると考える。吸着材利用率の増加は、必要吸着材量および顕熱の減少につながる。今後、脱水工程における水蒸気の脱水挙動を明確にすることで、本プロセスの更なるCO2吸着性能の向上が見込める。 蒸気脱着工程におけるCO2脱着挙動を調べた。回収ガスCO2濃度は約80%となり、従来のTSAプロセスでは得られない高濃度CO2回収を達成した。蒸気脱着を付与したTSAサイクルでは、CO2の脱着は容易であるが、一方で水蒸気の脱着の容易性がプロセス成立の鍵となる。この点、脱水工程における昇温幅およびサイクル時間を最適化することでCO2吸着性能の更なる向上が見込める。また、CO2の吸着性能を有しながら水蒸気の脱着性に優れた吸着材の開発もCO2回収エネルギー原単位を低減化させる有効な手段であると考えられる。
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