本申請研究では,超臨界二酸化炭素媒体を用いて効率的に資源を分離・回収できる抽出技術開発を目指して,超臨界二酸化炭素抽出プロセスにおける超音波照射効果の検討を行ってきた。昨年度は,コーヒー豆からのカフェインの抽出挙動から超臨界二酸化炭素抽出プロセスにおける超音波照射効果の検討を行ったが,今年度は,超臨界二酸化炭素とキレート剤を活用した金属資源回収プロセスについて検討を行った。実験試料としてアルミナにニッケル化合物を吸着させたものを用いて,ニッケルの抽出挙動を調べた。実験には,初年度に開発した流体の供給部,超音波照射抽出器,超音波照射条件の制御部,試料の回収部から構成されている圧力・温度制御型超音波照射抽出装置を用いて行った。予め調製したニッケル/アルミナ試料とキレート剤を抽出器に一定比で仕込み,温度制御しながら二酸化炭素媒体を既定の圧力(超臨界条件)に達するまでポンプで送入した後,超音波照射した場合と照射しない場合について抽出実験を行った。超音波照射なしの超臨界二酸化炭素抽出法と超音波支援型超臨界二酸化炭素抽出法によるニッケル抽出速度を比較したところ,超音波支援による抽出法の方が抽出速度は速く,昨年度検討を行ったコーヒー豆からのカフェインの抽出実験結果と同様,超音波の物理的な作用を応用することで抽出促進効果が確認された。また,抽出実験で使用した同様の装置を反応装置として用いて,水溶液中での超音波の化学的作用(単位エネルギー当たりのKI酸化反応速度)に及ぼす圧力,温度,周波数条件の影響についても評価を行った。その結果,加圧,加温条件下では,全般的に高周波数条件で反応速度が速いことが明らかとなった。
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