研究課題/領域番号 |
23651070
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
左子 芳彦 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (60153970)
|
研究分担者 |
吉田 天士 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80305490)
|
キーワード | 一酸化炭素 / 一酸化炭素資化微生物 / 炭素再利用 / 二酸化炭素 / C1化学 / 持続的低炭素社会 |
研究概要 |
CO2の再利用を目指し、CO⇔CO2の酸化還元両反応を触媒可能な酵素CODH(CO dehydrogenase)を有する一酸化炭素資化性微生物を海洋熱水環境から分離し、本酵素を利用することによりCO2からメタン、メタノール等C1化学物質の初発物質であるCOを生産し持続的低炭素社会の基盤を創生する。 平成24年度の研究成果は、以下の通りである。 1) 新属新種の真正細菌Calderihabitans maritimus KKC1株を鹿児島県薩摩硫黄島近海の鬼界カルデラ海底コアサンプルより分離した。KKC1株の最適増殖条件は65°C、pH 7.0-7.5で、胞子形成能を有し、深海熱水孔を除く海洋環境から分離された初めての菌である。KKC1株は様々な電子受容体存在下でCOを消費し水素を生産した。耐塩性に非常に優れており、14% (w/v)の塩濃度下でも増殖した。 2) Carboxydothermus属のCODH遺伝子(cooS-II)を指標とした、定量PCR法を確立した。本手法を鰻温泉環境試料に適用したところ、Carboxydothermus属細菌は温泉堆積物の表層に温度依存的に分布した。また、環境には最もcooS-IIコピー数の多い地点では945,000に達し、本微生物が環境において極めて重要な微生物となり得ることを示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は昨年度の温泉とは異なり、深海底熱水環境周辺域のコア堆積物から新属種のCO資化微生物の分離に成功という大きな成果が得られた。本種は、これまで分離されてきたCO資化性微生物とは分類学的にも生理学的にも全く異なる性状を示し、今後本種が有するCOデヒドロゲナーゼの存在とその性状に大いに期待がもたれるため、高く評価されると思われる。本成果は、これまで我々が築き上げてきた難培養性微生物の分離培養技術によるところが大きい。
|
今後の研究の推進方策 |
計画で期待されていた新種のCO資化性好熱菌が、温泉と海底熱水環境の堆積物中から分離されたので、両種のCODH(COデヒドロげナーぜ)遺伝子群を特定し、その遺伝子構造の解析を行う。本遺伝子の塩基配列を決定して既存のデータべースと比較することにより、CODHの分子系統学的解析を行うとともに、本酵素の機能解析の推測を行う。またこれらの遺伝子の塩基配列情報を用いてPCR法により、分離された環境周辺域におけるクローン解析を行って、本微生物の分布やその量について検討を行い、本微生物の生態や環境における役割について調査を行う予定である。またCODH遺伝子のクローニングと発現ベクターの構築を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、本年度得られた成果をもとに、分離されたCO資化性微生物と同様なCODH遺伝子を有する微生物群について、分離された環境やその他の関連する環境のどこにどのくらい分布するかをPCR法を用いて調査する。従って、調査旅費や分子生物学用の研究試薬を多く使用する予定である。
|