研究課題/領域番号 |
23651080
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研究機関 | 香川高等専門学校 |
研究代表者 |
森宗 太一郎 香川高等専門学校, 電子システム工学科, 講師 (30455167)
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研究分担者 |
田中 久仁彦 長岡技術科学大学, 工学部, 助教 (30334692)
辻 憲秀 香川高等専門学校, 電子システム工学科, 教授 (40099875)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 太陽電池 / CZTS |
研究概要 |
Cu2ZnSnS4(CZTS)は構成元素が地殻に豊富に存在し安価で毒性がないため,これを光活性層とする薄膜太陽電池の低コスト化と簡易作製プロセス化が期待されている。CZTS光吸収層を用いた太陽電池としてはAl/Al:ZnO/CdS/CZTS/Moの構造で最大変換効率6.77 %が報告されているが,大きな問題点の一つに界面層として有毒元素Cdを含むCdSを用いていることが挙げられる。このことはCZTSの無毒という特徴を相殺している。CdS界面層が変換効率向上にどのように寄与しているのか諸説あるものの正確には不明であり,界面層は可視光が透過し,抵抗率が高ければよいことがわかっている。そこで本研究では,界面層として抵抗率が高いことで知られている有機薄膜を検討し,CdSに代わる安価で毒性の低い界面層物質を見つけることを目的とした。さらに本研究で様々な元素や分子状態を有する有機材料を界面層として検討することにより,Seなどの毒性のない環境調和型薄膜太陽電池が実現できるだけでなく,レアメタル問題の対策として新しい技術の確立が期待できる。 今年度は、界面層の膜質を均一にして膜質の影響を省いた実験を行うために、界面層材料の成膜方法として蒸着法で成膜可能な有機材料を選定した。また材料の仕事関数とおおよその抵抗率を考慮した材料を選定し、界面層として約10種類の材料について試みた。その結果フラーレン系有機材料であるC60を界面層として使用した場合に比較的安定に太陽電池の出力が向上することが分かった。特に膜厚が数十nmから数nm程度のときに出力感度が増加している傾向があるため、今後は膜厚の制御や膜質の改善によって更に感度が向上するように検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は主にCdSに替わる界面層材料を選定することを目的とした。抵抗率や仕事関数、光透過性を考慮した種々の有機材料から界面層として使用できる可能性がある材料を決定することは、今後有機材料の応用分野を広げるためにも重要である。 フタロシアニン系や芳香アミン系などの有機デバイスとしての利用が有力な堅牢性の高い材料から10種類程度選び、それらの有機材料をCZTS光吸収層の上に成膜して界面層を形成してから素子化した後、太陽電池特性を評価した。 殆どの材料は整流性が悪く光電流も発生しないという結果が得られたが、フラーレン系材料C60を界面層として使用することで界面層がない場合と比較して感度が増加することが分かった。またC60の光透過スペクトルはCdSと非常に良く似ており、界面層として期待できることが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
下記に今後の大まかな検討内容について記す。・C60の最適な成膜条件について膜厚と成膜温度の検討・その他のフラーレン系材料や溶液法で成膜可能な有機材料について検討・太陽電池の分光的な評価として近赤外領域までの詳細なスペクトルから素子構造としての検討 次年度は主にC60界面層の膜厚の制御や成膜温度の制御を行うことで、太陽電池特性パラメータである開放電圧、短絡電流、曲線因子、効率がどのように変化するかを調べる。また可視領域だけでなく近赤外領域までの分光感度特性を測定することで、光電流の発生している波長領域を調べ、界面層の光学的な影響を確認する。さらに全て最終的に溶液法で成膜するための手法として可溶なフラーレン材料であるPCBMや抵抗率制御できる導電性高分子の界面層としての検討を試みる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
界面層を成膜する母体であるCZTSの成膜条件を長岡技術科学大学で最適化した結果、これまで効率低下の1つの要因となってきた成膜中に発生する残留Clを含まないCZTS膜が作製できるようになった。次年度はClフリーのCZTS膜を使用して界面層を成膜するため、平成24年度に繰越した研究責任者である森宗の予算470千円と分担者である田中助教の予算410千円を使用する。また、成膜する際に基板温度を変化させるヒーターや温度コントローラー、デバイス作製に必要な電極材料、有機溶媒などを購入するために平成24年度の予算600千円を使用する予定である。
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