研究課題/領域番号 |
23651084
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
木村 邦生 岡山大学, 環境学研究科, 教授 (40274013)
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研究分担者 |
山崎 慎一 岡山大学, 環境学研究科, 准教授 (40397873)
内田 哲也 岡山大学, 自然科学研究科, 講師 (90284083)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | バイオプラスチック / セルロース / 高性能高分子 / スーパーエンプラ |
研究概要 |
スーパーエンプラは、構造材料はもとより電子情報材料や航空宇宙分材料として広く利用されている。これらの樹脂は石油を原料としており、スーパーエンプラのバイオマス化が希求される。2,5-フランジカルボン酸(FDCA)は、セルロースを原料とするグルコースや果糖であるフルクトースから製造することができるバイオマス由来の芳香族ジカルボン酸であり、スーパーエンプラの原料として利用することができる。このFDCAを原料とした汎用樹脂やエンプラの代替樹脂は調製されているが、スーパーエンプラの系統的な開発研究の例はない。そこで、FDCAと石油由来の原料を組み合わせたバイオマススーパーエンプラとして以下の2点について検討した。1.芳香族ポリエステルの調製と評価:FDCAと1,3-ならびに1,4-ジアセトキシベンゼンとの共重合により、ネマチック液晶性を有する芳香族ポリエステルを調製に成功した。液晶転移温度は、共重合組成によって制御することが可能である。固相重合により、分子量を増大させることによって熱分解温度を向上させることができ、高耐熱性を付与することができた。重合方法を検討し、石油由来の液晶性芳香族ポリエステルと同様に、溶融重合と固相重合との組み合わせによって、高分子量ポリマーが調製できることを明らかにした。2.芳香族ポリエーテルケトンの調製と評価:FDCAを酸塩化物(FDCC)に変換し、ジフェニルエーテルとのFriedel-Crafs重合によってポリエーテルケトンを合成した。現在のところ、高分子量体は得られていないが、FDCC由来ポリマーは177oCに融点を有し、窒素雰囲気中での10%重量減少温度を416℃に示す高耐熱性の結晶性ポリマーであることが分かった。高分子量体を調製するためには、ポリマーに対する良溶媒中での重合など重合条件の検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画していた液晶性ポリエステルの調製には成功した。FDCAの低反応性を解決するために、反応速度解析に基づいて重合条件を最適化することで、共重合体の調製法を開発した。この重合方法は、既存の芳香族ポリエステルの調製法と同様に溶融重合と固相重合を組み合わせており、既存のインフラの転用が可能である。また、組成を変えることで結晶性ポリマーから非晶性ポリマーまでを調製することができ、用途に応じて対応できる。特に組成により液晶性を示すポリマーが調製可能であり、その液晶転移温度は共重合組成により可変である。ポリエーテルケトンについては、塩化アルミを触媒とし、FDCCとジフェニルエーテルとのFriedel-Craft重合を検討した。目的とするポリマーが得られることは明らかにしているが、まだ十分な高分子量体が得られていない。重合が進行しない理由として、FDCAから誘導されるクロライドの低い反応性、重合中での沈殿の生成、沈殿物の膨潤性の低さが主であり、問題の把握はできている。計画通りに、次年度に向けて対策を講じる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年に引き続き、ポリエーテルケトンの高分子量化を検討する。主要な対策としては、沈殿の膨潤度を上げるような重合溶媒の探索、塩化アルミニウム量の最適化、求核性モノマーの変更である。更には、FDCCをモノマーとしてより耐熱性の高いポリイミダゾールやポリオキサゾールなどの複素環ポリマーの調製を行う。まずはポリリン酸などの脱水用媒体中での溶液重合による調製を検討し、重合の様子を把握する。その後、FDCAと該当するモノマーとの重合を高温溶媒中で行い、重合結晶化を誘起することによる高次構造形成を検討する。この重合結晶化法により、高性能ナノファイバーや微粒子の調製を目指す。さらには、これまでに検討した高分子を重合する際にセルロースナノファイバーを分散させることで、ワンポットでのセルロースナノファイバー複合体の調製も検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画どおり、消耗品費として、モノマー試薬代、重合溶媒代、NMR測定溶媒代、ガラス器具代、電子顕微鏡フィラメント代などに経費の多くを計上する。また、研究成果を学会で発表するためと情報収集のために国内旅費にも使用する。最終年であるので、成果報告用として、文献複写費と研究成果投稿料にも充当する。
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