研究課題/領域番号 |
23651086
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研究機関 | 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(共通施設) |
研究代表者 |
青野 重利 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(共通施設), 岡崎統合バイオサイエンスセンター, 教授 (60183729)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 重金属センサー / 蛍光プローブ分子 |
研究概要 |
本研究では、重金属汚染の有無を簡便かつ高感度に判定するシステムの開発を目的とし、重金属が存在する場合にのみ選択的に何らかのシグナルが発生するプローブ分子の設計、開発を行った。本年度の研究では、重金属結合モチーフとしてHRM(heme regulatory motif、CPモチーフとも呼ばれる)を利用し、HRMを含むポリペプチドの両端に、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)が可能な二種の異なる蛍光タンパク質を連結したプローブ分子の合成を行った。HRMを含むポリペプチドとしては、ラット由来のアミノレブリン酸合成酵素のプレ配列部分(N末端~120残基 (ALAS-120)、およびN末端~56残基 (ALAS-56))を利用した。ALAS-120、およびALAS-56の両端に、蛍光タンパク質としてKO1(吸収極大:548 nm、蛍光極大:559 nm)およびMiCy1(吸収極大:470 nm、蛍光極大:496 nm)を連結したプローブの発現ベクターを構築し、大腸菌における発現を行った。いずれの系においてもタンパク質の発現は認められたが、精製直後のサンプルにおいては、ALASペプチドのC末端側に連結した蛍光タンパク質の蛍光発色団の形成が観測されなかった。これは、対応する蛍光タンパク質のフォールディングが進行しなかったためであると考えられる。ALASペプチドのN末端側のみに蛍光タンパク質を連結したプローブ分子を大腸菌中で発現させた場合には、蛍光発色団が形成されたプローブ分子が発現した。このプローブ分子を精製し、in vitroにおいてヘミンを添加すると、蛍光タンパク質による蛍光が消光されることが分かった。このことから、調製したプローブ分子中に存在するHRMにヘミンが結合することにより、蛍光の消光反応が進行したものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究においては、重金属結合モチーフとしてHRM(heme regulatory motif、CPモチーフとも呼ばれる)を有するラット由来のアミノレブリン酸合成酵素のプレ配列部分(N末端~120残基 (ALAS-120)、およびN末端~56残基 (ALAS-56))を蛍光タンパク質と連結した蛍光プローブ分子を設計し、大腸菌をもちいてそれら蛍光プローブ分子を発現させることに成功している。また、発現した蛍光プローブ分子の精製法も確立し、精製した蛍光プローブ分子が、in vitroにおいて鉄イオンを含むヘミンを特異的に結合することを明らかにしている。また、ALASペプチドのN末端側のみに蛍光タンパク質を連結したプローブ分子では、ヘミン結合に伴って蛍光タンパク質由来の蛍光強度が減少することを示した。これらの結果は、ここで設計した蛍光プローブ分子が、本研究の目的である重金属の存在を特異的かつ高感度に感知するためのプローブ分子として機能し得ることを示すものである。
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今後の研究の推進方策 |
当初設計したFRET型蛍光プローブ分子は、大腸菌中で発現し精製も可能ではあったが、蛍光タンパク質のフォールディングが完了せず、蛍光発色団が形成されないという問題が生じた結果、その対応策を検討する必要があった。そのため、当初の計画では初年度に使用を予定していた研究費を次年度に使用する予定となった。この問題を解決するため、ALASペプチドと蛍光タンパク質との連結部分にリンカー領域を追加したプローブや、金属結合モチーフとしてHRM以外のペプチドを用いたプローブの設計、合成を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費は、各種重金属結合モチーフと蛍光タンパク質を連結したプローブ分子を大腸菌中で発現させるための発現用ベクター調製のための各種試薬、プローブ分子を発現した大腸菌を培養するための培養用試薬、発現したプローブ分子を精製するための各種カラムクロマトグラフィー用のカラム、およびタンパク質精製用試薬等の購入に使用する。旅費は、得られた研究成果を国内学会で発表するための国内旅費として使用する。
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