本研究で主眼となる貴金属材料と磁性を担う材料の二種類の異種ナノ材料を構成要素としたナノ構造体超格子結晶では、貴金属ナノ材料と磁性ナノ材料が密接あるいは接触していなければプラズモンを積極的に活用した十分な磁気光学効果が期待できない。本年度は、超格子結晶の一例として、貴金属材料と磁性材料が直接接触した貴金属コア/磁性体シェル複合ナノ粒子に着目し、前年度までに合成に成功した金コア/酸化鉄シェル複合ナノ粒子を用いて、ナノ粒子超格子結晶材料の作製技術の構築、ならびに、その光学特性の検討を行った。 前年度までに合成した金コア/酸化鉄シェル(シェル層厚1.8nm)複合ナノ粒子の粒径が比較的均一であることに着目し、トルエン溶媒中に2.7mmol/Lの濃度で分散した複合ナノ粒子分散溶液中からガラス基板を2cm/hourで引き上げることで、気相-液相界面において複合ナノ粒子が自己組織化で配列することでナノ粒子超格子結晶材料を作製した。走査型電子顕微鏡観察から、基板上に複合ナノ粒子が最密に配列した平坦な粒子膜となっていることを確認した。この複合ナノ粒子膜の光学吸収スペクトルには、580nm付近に吸収が最大となる波長があり、分散溶液の吸収波長とほとんど変わらないことが分かった。これは、粒子膜では金コア粒子間隔が酸化鉄シェルにより離れているため、金コア粒子間でのプラズモン共鳴吸収の相互作用はほとんど働いていないことを意味する。また、作製した粒子膜を大気中で2時間熱処理した結果、吸収波長は長波長側へシフトすることが分かった。これは、熱処理により酸化鉄シェル層の酸化が進行し、シェルの誘電率が変化しているためと考えられる。このことから、複合ナノ粒子の光学特性がシェルの状態に非常に敏感であることを見出した。
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