本研究では、カチオン性の金属錯体が水素結合や金属間相互作用等の多種類の、しかも多重の非共有性相互作用に基づいて自己集積化し、それに伴い、無機アニオンがカチオン性分子集積体の空孔に異常集積化するようなイオン性ナノ構造体の創製について検討した。 今年度は、まず、平成24年度に引き続き、本研究において新たに開発した機能性錯体配位子と八面体構造を形成しやすい金属イオンとの反応により、大気中でも安定なカチオン性の多核金属錯体を合成した。次に、この多核金属錯体を含む反応溶液に、サイズ、価数、幾何構造の異なる様々な無機アニオンを添加し、金属化合物の固体としての単離を試みた。その結果、特に、塩化物イオンや硝酸イオンを添加した場合に、極めて良好な単結晶が得られることが分かった。得られた金属化合物の固体状態での吸収スペクトル、円二色性スペクトル、赤外吸収スペクトルなどを測定し、これらの化合物の同定ならびに基礎物性の調査をおこなうとともに、代表的な金属化合物については、単結晶X線解析により、その結晶構造を詳細に決定した。これにより、カチオン性分子集積体を構成単位とする結晶中の空孔に無機アニオン同士が異常集積化していることを確定させた。以上、本研究により、多重の非共有性相互作用の導入により、錯体カチオン同士を集積化させ、同時に、そのカチオン集合体を更なる非共有制相互作用により結晶中に蜜に配列させることができれば、その結晶の空孔に多数の無機アニオンを集積化させることができるということを明らかにし、無機アニオンの異常集積化をもたらす指導原理を見出した。
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