研究概要 |
1920年代にW.Kuhnが円偏光(CPL)を用いた絶対不斉合成の可能性を言及し、1970年代になってKagan, Calvinがヘキサヘリセンの円偏光 合成(2%ee)により実証した。近年, CPL励起による光学活性分子、金属錯体、超分子、液晶、高分子の生成が報告されているが光学活 性収率は低く、RikkenとRaupachが報告した金属錯体(ラセミ体)の不斉光分解では、静磁場印加、自然光照射で0.01%eeであった。 本年度はアゾベンゼンを含まないポリマーとして(1)光学不活性フルオレンービチオフェン交互コポリマー(PF8T2)の希薄溶液分散体 ならびに良溶媒-貧溶媒に分散させた凝集体(初期はラセミ体)に対する円偏光照射効果を詳細に検討した。その結果、希薄溶液中で は光学活性の発現は認められなかったものの凝集体とすることにより光学活性の発現/消失/反転/保持を実現した。さらに円偏光効果(波長、円偏光度、照射時間)、溶媒効果などを詳細に検討した結果 、PF8T2凝集体から比較的大きな光学活性(CD)の発生、光学活性のラセミ化、光学活性の反転、光学活性の長期保持特性が円偏光のみで完全制御できた。また蛍光量子収率は0.1前後であるが比較的大きな円偏光発光特性が発現した。円偏光は±1のスピン成分を有しており、フォトニックスピンの光閉込効果により鏡像対称性の破れと保持が完全制御できた。本実験からは1μmサイズの粒子に対してフォトニックスピンの 注入と閉込め効果が有効に作用することによる鏡像対称性の破れが効果的に起こったものと考えた。
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