多細胞生物の器官形成の機構を明らかにするためには、細胞集団の運動における物理量の空間分布を測定することが重要である。本研究では、細胞集団が運動する際の細胞-細胞間に発生する「歪」の空間分布を測定する手法を開発する。細胞集団に対する「歪」の空間分布と細胞の運動方向とを比較することで、細胞集団の協調的運動の力学モデルを提案する。 細胞-細胞間に発生する「歪」を評価するために、①生きた細胞の細胞間接着構造を蛍光イメージング、②構造の変形を数値解析、の2つの項目に取り組んだ。 ①蛍光タンパク質を結合させた細胞間接着タンパク質によるライブセルイメージング 細胞間接着部位に局在するタンパク質と蛍光タンパク質とのキメラタンパク質を発現させた上皮細胞を用いて、蛍光顕微鏡によるライブセルイメージングを行った。蛍光タンパク質として、GFPとRFPを用いることで、細胞間距離の変化を抽出することが可能となった。細胞の形を変化させる試薬の投与前後での細胞間の距離の変化を評価した。 ②蛍光像から構造の変形を数値解析 まず細胞骨格繊維上に発生した変形を評価するための数値計算プログラムの構築に成功した。そのプログラムを用いて、微小管に発生した変形を評価した。他の細胞骨格を崩壊させる試薬を投与すると、微小管に大きな変形が生じることが明らかになった。この繊維構造の定義と変形評価のアルゴリズムは、本研究で目指している細胞間接着構造の変形も評価できると期待している。
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