研究概要 |
H23年度の【アモルファス度と諸特性】ではアモルファス度の測定がX線解析で不可能なので、横波超音波法によるアモルファス相解析よりアモルファス度の定義がなされた。合金リボン作成時の周速度が10,000 rpm(104 m/s)の時電気伝導性は銀より4桁向上したが、約-50℃までの低温領域でしか出現しなかった。常温バリスティック(弾道)伝導現象の出現には更に高速にする必要があった。【金属クラスター構造解析と水素位置の確定研究】では、Spring 8でのXAFS解析とクラスターの解析シミュレーションにより、Ni中心の20面体Ni5Zr5Nb3の存在が明らかとなった。水素はクラスター中Ni元素を避けるZrとNb元素の4面体内に最大14個浸入できる事も判明した。H24年度の【アモルファス度と諸特性の更なる追求】では合金リボン作成時の周速度を常時10,000 rpm(104 m/s)に上昇させ水素含有条件を試みた結果、前年同様電気伝導性は銀より4桁向上したが、約-50℃までの温度領域までであった。常温バリスティック伝導現象の出現には、アモルファス度に加えて水素含有条件に対する研究が更に必要であることが判明した。【超高圧力下の電気伝導特性の研究】では、高圧の付加によりクラスターの原子間距離が収縮し、超電導類似のバリステック現象の安定化が図られると期待したのであったが、~8 GPaの圧力の範囲では 期待通りの結果が得られなかった。しかしながら、アモルファス合金特有の負の電気抵抗係数(TCR)が超高圧力下、金属結晶特有の正に変換した。これは超高圧力の付加によって共有結合性が強まったためと思われる。TCRの負/正転移は特筆すべき結果とのことである(査読者談)。なお【磁気誘起弾道伝導効果検証】は東日本大震災で東北大学金属材料研究所強磁場センターの磁場発生装置が壊れ、実験できなかった。
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