研究概要 |
本研究では、ケージ構造を有するシリカクラスターをナノ構造単位として用い、それらの3次元配列・連結制御により、常温常圧下、結晶性シリカ骨格をボトムアップ的に構築する革新的なアプローチを開拓し、新規ゼオライトを創製することを目的としている。平成23年度は、有機修飾されたシリカクラスターの分子結晶形成・固相重合によるゼオライト合成について検討した。シリカクラスターとしては、LTA型やACO型ゼオライトの二次構造単位として知られる、二重四員環型構造 (以下D4Rと略) のユニットを用いた。窒素雰囲気下でSi-H末端のD4R (H8Si8O12) と1-アダマンタノール (AdOH) を当量比1: 1で反応させた後に、メタノール (MeOH) を加え、前駆体分子 (Si8O12(OR)8, R = Ad or Me, Ad:Me = 1:7)を白色結晶粉末として得た。前駆体分子の粉末を濃度を変化させた各種酸の中に分散させ、室温下、固相での加水分解・縮重合反応を行なった。さらに、焼成により有機物を完全に除去することで、最終生成物とした。生成物の固体NMR測定の結果、酸処理によりMeO基が大幅に減少し、縮合反応が進んでいたのに対し、AdO基は残存しており、焼成を行うことで完全な除去と多孔体化が達成された。得られた各サンプルについて、窒素吸脱着等温線を行った結果、酸処理に続いて焼成を行ったサンプルは高いBET比表面積(740 m2/g)を示した。焼成によりミクロ孔容積が顕著に増加しているほか、メソ孔を有することが分かった。ミクロ孔は細孔径が約1 nmであり分布が狭いのに対し、メソ孔はブロードな分布を示した。メソ孔は酸処理により、ミクロ孔は焼成によるAd基の除去により形成されたと考えられた。XRD測定より、酸処理、焼成と反応を進めるにつれて前駆体の長周期構造が失われることが確認された。
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