約40年前、表面超電導の存在が理論的にSaint James及びde Gennesによって指摘された。この表面超電導現象は、表面からおよそコーヒレント長さ以内に発生すると言われている。最もポピュラー的な超電導材料YBCOのゼロKでのコーヒレント長さは約1.5nmであることから、この表面超電導現象は表面から精々数原子層の間で存在するものである。従って、表面超電導現象の解明には極薄表面層の抵抗率測定技術の開発は必要不可欠である。 しかしながら、現在よく利用される超電導転移温度の測定には主にホール測定のような四探針(四端子)法である。電極と試料間の接触抵抗を減らすためには、しっかりした電極作製が行われ、電極金属は試料中に侵入し、極表面層抵抗の測定は不可能であった。従って、長い間表面超電導に関する研究は進まず、理論上での進展も阻害された。 本研究では、弾性表面波デバイス表面から漏れる移動性電界ポテンシャルを超電導体に導入し、試料中キャリアと導入電界との相互作用を利用して、極表面層抵抗の測定に成功している。この方法では、電流ではなく電界を導入することから電気回路が必要なく、電極の作製も要らないことから極表面層の測定を実現したわけである。今回の補助を受け測定装置が完成し、主にYBCO試料を中心に研究を行った。まず、YBCO試料表面について抵抗率の温度依存性を測定し、ある温度において抵抗が急激に減少することが確認された。その温度は約-60℃であった。これは表面超電導の転移温度である結論には至っていなかったが、別の測定法による確認の為に先例を作ったと考えている。これは先駆け的な研究結果であり申請計画どおりのものとなった。 更に、表面現象であるだけに各種ガスの表面吸着効果についても実験を行った。酸素、窒素、水素ガスの吸着や脱離を超高真空中で行い、表面コンダミ効果を除いた実験結果を得られた。
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