クロロフィルを基本骨格とした両親媒性分子がマイクロエマルション界面において加熱条件下、組織化すると、エマルション構造が球状からチューブ状へと劇的に変化し、サイズが均一なチューブ構造が得られることを最近の成果として明らかとしている。本系では両親媒性クロロフィル(Chl-Py)の組織化が各々のエマルション表面で独立して進行するため、組織化する分子数、チューブ構造のサイズはエマルションのサイズで規定されることが解っている。長さの揃ったチューブ構造を創出するための革新的な分子集積システムのさきがけとなる成果であり、今後の展開を図るためのもその一般性を分子レベルで検証する必要があった。そこで、本課題ではまず、分子レベルでのメカニズムを明らかとし、新たな分子設計の指針を得ることを目的として研究を展開してきた。種々の両親媒性分子を用いて検討を行った結果、強い1次元組織性を持つ分子を内包したエマルションからのみロッド状の構造体が創出できることが解った。また、これまで、数百ナノメートルのエマルションが加熱によりチューブ構造へと変換できることを示してきたが、適切な分子を選ぶことにより、エマルションのサイズをマイクロメートルまで拡張してもエマルションの濃縮により1次元構造体が得られることを明らかとした。様々なサイズのマイクロエマルションをテンプレートとして用いることで、エマルションのサイズに規程された1次元組織構造体を得る為の基礎的な知見をえることが出来た。最終年度には、マイクロ流路デバイスを用いてサイズの規定されたエマルションを創製し、それらの空間配置を制御して配列することにも挑戦した。その結果、異なる分子を内包したエマルションをマクロ空間で接触させ、濃縮することで異種の1次元構造体が分子レベルで接合できる可能性が示唆された。
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