研究課題/領域番号 |
23651123
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
清水 洋 独立行政法人産業技術総合研究所, ユビキタスエネルギー研究部門, 研究グループ長 (40357223)
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研究分担者 |
三好 弘一 徳島大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (90229906)
藤原 正浩 独立行政法人産業技術総合研究所, ユビキタスエネルギー研究部門, 主任研究員 (90357921)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 液晶 / ナノ粒子 / シリカ / 分子配向 / 結晶多形 / 電場応答 / コアーシェル法 / 金微粒子 |
研究概要 |
コアーシェル法において液晶分子(5CB)をシリカカプセル(内径40nm)内に密に内包させるため、コアとして用いる金微粒子への5CB分子の吸着及び金微粒子の非凝集状態を金微粒子の522nmのサーフェスプラズモンピーク波長でモニタリングし、5CB分子の吸着による長波長シフトと吸光度減少を明らかにした。[5CB]/[Au]p=4320(最大値の34%)で50~60℃で調製した試料のTEM像から外径50±4nm (n=33)、内径約30nm、シェル厚約10nmのカプセル形成を確認した。申請費用で外注した5CBのシリカ粒子中の深さ分析から炭素原子が一部のカプセル内部及びシェルに沿って内側に観測された。窒素原子は領域のSAEDの回折パターンにより検出され、5CBの存在が示唆された。一方、中空シリカマイクロカプセルへの5CBの外部からの注入も検討した。平均外径8μm及び12μmのシリカマイクロカプセル(それぞれ細孔径1.53nm及び9.23nm、空孔率42%及び58%)を既報に従って合成、減圧下5CBの液体温度(50℃)で5CBを注入、それを吸引濾過後所定量のヘキサンで洗浄した後、熱重量分析(TGA)及び塩化メチレン溶液の紫外・可視吸収スペクトルにより5CBの体積充填率がそれぞれ8%及び13%を得た。示差走査熱量計(DSC)測定では、ネマチック(N)相ー等方性液体相転移温度(透明点)はバルクの5CBと変わらないものの、一方、結晶ーN相転移温度(融点)はバルクの相転移の低温側にもう一つの相転移が存在することが判った。しかもその転移潜熱は相関して多様に変化することが示唆された。ナノ空間におけるN液晶の相転移に関する一連の理論研究は透明点の低下と融点の変化を予測したが充填率の低い系での現象については論じられていない。ナノ空間シリカ微粒子内の5CBの相転移を考える上で重要な知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
液晶内包シリカナノ粒子の調製では、粒子径40nmの金微粒子を用いて、1Au粒子あたり4320個の5CB分子を吸着(最大値の34%)させた条件下でシリカカプセルの調製が成功したこと、5CB分子が内部にある様子が深さ分析と高倍率画像から得られたこと、Au微粒子と5CBの吸着実験からさらに5CBを取り込ませることが可能なことが示されたことから概ね順調に進展していると判断している。一方、予備的に始めたサイズの大きな中空シリカ粒子(マイクロカプセル)を用いた実験では、充填率の制御による多形制御の可能性を示唆する結果を得たことから、ネマチック液晶を内包したシリカナノ粒子の新たな機能への検討課題が増えたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に得られた成果を基にして、最大吸着量の68%~98%までの5CB分子を40nmのAu微粒子に吸着させてシリカカプセルを100mlオーダーで調製し、限外ろ過装置を用いて1mlまで濃縮することにより物性計測に使用する。また、最大吸着量を増やすことによりシランカップリング試薬が吸着できなくなるため多孔質カプセルになることが予測され、マイクロカプセルでの実験結果からこれに5CB液体を直接加え濃度拡散によりさらに5CBを取り込ませることが期待できる。これらにつぃて5CBの熱相転移や電場応答性について知見を得ると共にマイクロカプセルへの充填率制御による相転移制御に関して考え方を確立できるよう検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
産総研では予算額と最初の一連の実験の研究代表者による実施の必要性(マイクロカプセル調製等)からH23年度の実験補助員雇用費をH24年度に残した。H24年度は産総研所内規定に準じた形で実験補助員を雇用し、研究の加速を図る。
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