研究課題/領域番号 |
23651126
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
西野 吉則 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (40392063)
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研究分担者 |
城地 保昌 (財)高輝度光科学研究センター, XFEL研究推進室, 研究員 (30360415)
別所 義隆 独立行政法人理化学研究所, 機能解析第2研究チーム, チームリーダー (70242815)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | コヒーレントX線 / フェムト秒 / 生体分子 / 放射線、X 線、粒子線 / X線自由電子レーザー |
研究概要 |
本研究の目的は、新世代のX線であるX線自由電子レーザー(XFEL)を用いた複雑系生体分子の構造可視化法を構築することにある。XFELがフェムト秒の時間幅をもちコヒーレントであることを活用し、溶液中で自然な状態にある生体分子を、分子の動きの時間スケールよりも短いX線露光で、止まった構造を可視化する未踏の手法を構築する。本年度は、測定装置内の真空中においても、制御された試料環境下でパルス状コヒーレントX線溶液散乱測定を可能にする試料ホルダとして、環境セルを開発した。開発した環境セルは、溶液試料をシリコンナイトライドの薄膜でサンドイッチした構造をもっている。XFELのシングルショットで環境セルは破壊されると予想されるため、シリコン基盤にアレイ状に多数の環境セルを配置した。研究の結果、設計通りの構造を持った環境セルを開発することに成功した。さらに、金のナノ粒子集合体や生体分子試料に対して、X線自由電子レーザーを照射した際に得られるコヒーレント回折パターンのシミュレーションを行い、XFEL波長、カメラ長(試料検出器間距離)などの実験条件を定めた。X線のフルーエンス、検出器のピクセルサイズなどは現状利用可能な装置のパラメータを使用した。また、複雑系生体分子の構造可視化法を可能にするアルゴリムの開発も進めた。開発した環境セルに、金のナノ粒子集合体やバクテリアなどの生物試料を封入して、X線自由電子レーザー施設SACLAを用いて、パルス状コヒーレントX線溶液散乱測定を行った。測定の結果、試料が破壊される前の状態からのコヒーレントX線回折パターンをXFELのシングルショットで計測することに成功した。環境セルや溶液からのバックグラウンド散乱の影響は観察されず、開発した環境セルが高精度のパルス状コヒーレントX線溶液散乱測定を適していることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
X線自由電子レーザー施設SACLAが順調に立ち上がり、平成24年3月よりユーザー運転を開始したため、当初計画では平成24年度から行う予定であったX線自由電子レーザーを用いた実験を、本年度行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
生きた細胞などに対して、X線自由電子レーザー施設SACLAを用いたパルス状コヒーレントX線溶液散乱測定を進める。試料ホルダーとして用いた環境セルの改良を進める。また、実験で得られたデータに、開発を進めている複雑系生体分子の構造可視化法を可能にするアルゴリムを適用する。
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次年度の研究費の使用計画 |
生きた細胞などに対して、X線自由電子レーザー施設SACLAを用いたパルス状コヒーレントX線溶液散乱測定を行うため、試料ホルダー作成に必要なSiNメンブレン等の支払いに使用する。また、平成23年度に実施した試料調製用の配管部品の支払に使用する。
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