本研究では、核酸の自在設計性と金属錯体などの低分子化合物の機能性を融合した新規構造体を構築することを試みた。化学刺激を用いてDNAのナノ構造体の形成と解離を制御し、さらに金属錯体などの機能性分子とDNAナノ構造体を融合することで、これまでにない機能性マテリアルを合目的的に設計することを最終的な目的とした。 これらの達成に向けて本研究で注目したのが、DNAの非標準構造である。特に、金属錯体結合性をもつ四重らせん構造やpHに応答して構造をスイッチする平行型二重らせん構造の合理設計が機能性マテリアルの構築と制御に有用である。そこで二カ年にわたり、ナノ構造体の自在制御パーツとして非標準構造の合理設計を試みた。平成23年度では、DNA鎖に種々の化学修飾を導入することで、非標準構造の熱力学的安定性を制御することが可能となった。 平成24年度では、長鎖のテロメアDNAの高次構造を解明することで、合目的的に四重らせん構造を数珠状に配向することが可能となった。さらに、四重らせん構造と特異的に結合することができる金属錯体についても検討した。その結果、二重らせん構造とは全く親和性を示さず、四重らせん構造のみと結合する金属錯体として、アニオン性の金属フタロシアニンが有用であることを示すことができた。また、その結合様式についても定量的に解析することができた。最終的には、ナノ炭素マテリアル表面に四重らせん構造を配向して標的タンパク質を特異的に検出することや、金属錯体を用いたタンパク質検出も可能となった。このように当初の計画に従って、DNAの高次構造と金属錯体に関する合理設計に関する知見を得ることができ、さらに機能性マテリアルの合理設計を遂行できた。これらの成果は、国際的専門誌への投稿と国内外での学会発表にて公表した。
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