生物の基本単位である細胞は、マイクロサイズにきわめて多彩かつ高度な機能が集約されており、これを細胞のサイズに合わせた人工的なデバイスに集積化することにより、現在の技術では実現不可能な画期的なシステムを創成できる可能性を秘めている。本提案では、強力な電気を発生する器官を有する特殊な生物である電気魚の発電機能に着目した。発電細胞の利用により、従来の燃料電池とは全く異なる原理の化学エネルギーから電気エネルギーへの直接変換システムが実現可能と考えられる。本デバイス実現のためには、まず発電細胞の培養法を確立し、発電の制御法を確立する必要がある。以上をふまえ、本研究の目的は、発電細胞を集積化した発電システムの基盤創成とした。 平成26年度は、これまでに行ったシビレエイ捕獲量調査により、安定的に捕獲できる時機が冬~春にかけての時期であるという知識、およびシビレエイ個体の発電の電気的特性としてのシビレエイの発生電圧・電力測定データをベースにし、電気器官の特性評価を行った。まずは電気器官を薄くスライスした組織を、多点同時細胞外電位測定器MED64を用い、神経刺激物質アセチルコリンを人工脳髄液に溶かして還流装置で流したところ、細胞シグナル強度に相当する程度のスパイク信号が検出された。また、電気器官を神経ごと取り出し、むき出しになった神経叢を物理的に刺激することで、数Vのスパイク上の電圧発生を確認できた。これにより、細胞および組織としての生存および電気的特性が明らかになり、発電デバイス構築に向けた基礎が築けたといえる。
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