MEMS技術を利用した医療用マイクロマシン等においては、特に生体内での使用を考慮した場合、水中を含む湿潤環境における長期信頼性の評価と向上が大きな問題となる。本研究ではMEMS構造に多用されるシリコンを対象にこれら水中および湿潤環境での強度試験および疲労試験を行い、水分の存在下における強度設計手法と、生体内の環境においても強度や疲労寿命の低下を抑制する方法論の確立とを目指した。液中疲労試験装置を開発し、これを用いて水溶液中におけるシリコンの機械特性を調査するとともに、シリコン内部の結晶欠陥をEBIC(電子線誘起電流)によって観察し、疲労過程における損傷の蓄積と環境との関係を調査した。一方、表面に吸着された水分子から解離した水素が内部に侵入し、機械特性の劣化を引起す可能性が見出されたため、その影響の一端を明らかにする実験をも実施した。さらにこれらを総合して、異なる環境に対する疲労寿命予測モデルの検討を行った。
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