研究課題/領域番号 |
23651143
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
葛西 誠也 北海道大学, 情報科学研究科, 准教授 (30312383)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ブラウンラチェット / 1次元 / 化合物半導体 / 低エネルギー / 電子輸送 |
研究概要 |
無秩序に振る舞う電子集団からコヒーレントな電子の流れを引き出す電子ブラウンラチェット技術は、将来エレクトロニクスの低消費電力化において重要な役割を果たすと期待される。本研究の目的は、雑音を活用した超低エネルギー電子輸送技術を目指し、化合物半導体ナノワイヤチャネルに非対称ゲートを周期的に設けた電子ブラウンラチェット素子を実現し、コヒーレント電子輸送の実験実証、その評価検討を通して室温動作の指針を得ることである。平成23年度の実績は次の通りである。(1)GaAsナノワイヤにおいてキャリア進行方向に非対称ポテンシャルを形成するためのゲート設計を、3次元ポテンシャルシミュレーションを用いて行った。くさびを入れたゲート形状とすることでチャネルに数百nm周期で非対称ポテンシャルを導入できることがわかった。(2)上記の設計構造をもつ単一ゲートおよび周期ゲートGaAsナノワイヤ素子の試作を行い、所望の素子を実現した。単一ポテンシャル素子において電気的測定により非対称ポテンシャルの存在を確認するとともに、ポテンシャルの基礎情報を得た。本特性の温度依存性より得られるアレニウスプロットは熱電子放出型の特徴を示し、このときの障壁高さは12meVであった。また、低温においてソース端子とドレイン端子を入れ替えると伝達特性のしきい値シフトが見られ、本結果が非対称ポテンシャルに起因していることを定性的に説明した。ポテンシャル周期と電子平均自由行程の整合条件より、ブラウンラチェット動作温度を40 ~ 100 Kと見積もった。(3)対称型多重ゲート周期ポテンシャル構造素子を試作し、決定論的信号入力による電荷転送を実現した。また、少数電子電荷転送においてはその効率は表面状態に強く依存することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
素子設計と試作が完了し、非対称ポテンシャルの形成と基礎情報を実験的に得た。ほぼ当初の計画に沿って着実に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
非対称周期ゲート素子の試作が完了している。本研究の知見より得られた動作温度近傍での特性評価を進める。素子構造が最適化されていないため、現象発現が些細で電流特性に明瞭に反映されない可能性がある。対応として、評価系の低雑音化、および、平均自由行程の温度依存性を細かく評価し動作条件を詳細に決める。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度の未使用額の発生は、備品費を素子試作が効率的に進むよう当初予定の評価系備品から試作プロセス用備品に変更したためである。差額は上記の評価系改善に充てる。
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