研究概要 |
極薄Ruスペーサー層を有する垂直通電型磁気抵抗薄膜素子開発のための基盤技術開発を行った。超高密度ハードディスク装置用再生ヘッド応用などの用途を想定した場合、素子サイズはサブミクロンオーダーとなる。このような極小デバイスで、強磁性層の磁化方向を膜面内方向とした場合には2枚の強磁性層の素子端部における静磁気的結合が大きくなることから、磁化方向を膜面垂直方向とする強磁性材料について検討を行った。強磁性材料にCo/Pd多層膜を選び、各層膜厚、積層回数、耐熱温度について詳細な検討を行った。その結果、Pd層厚1nm以上において垂直磁気異方性が得られ、同膜厚領域においてCo層厚ならびにPd層厚の増大に伴って磁気異方性定数が増大することが判った。Co膜厚0.4nm,Pd膜厚2nm,積層回数4回の膜構成において、単位面積当たり1.9 erg/cm2の垂直磁気異方性が得られ、350℃以上の耐熱性を有することが判った。 また、極薄スペーサー層のRKKY相互作用による大きな反強磁性結合に抗して、2枚の強磁性層の磁化回転を伴わない安定反平行配列を低磁界域で実現する為は、片方の強磁性層に大きな交換磁気異方性を付与する必要がある。平成23年度までの研究成果から、反強磁性層にMn-Irを用いた場合の交換磁気異方性を大きくするためには、強磁性層磁化方向が膜面内にある場合にはMn-Ir層に接する強磁性層をbcc構造を有するCoリッチな組成とすることが有効であることが判っている。平成24年度は膜面垂直磁化の場合の交換磁気異方性について検討を行った。その結果、膜面垂直磁化の場合においてもMn-Ir層に接する界面に70at%Co-Fe合金を配することが大きな交換磁気異方性の誘導に効果的であり、膜面内磁化交換磁気異方性と同様のメカニズムで膜面垂直磁化交換磁気異方性が誘導されていることが明らかとなった。
|