本研究では、カーボンナノチューブ中の伝導電子の特に長い平均自由行程を利用し、周期化した磁界を加えることによって、電子と周期化磁界の共鳴的な相互作用によってコヒーレント電磁波の発生素子に関する基礎研究である。この研究で重要な点はカーボンナノチューブの操作および周期化磁界の発生手法である。カーボンナノチューブを溶液中に分散し、電極間電圧を加えることによって、カーボンナノチューブの電極間の配列手法を再現性は良くないが確立した。これに基づく、カーボンナノチューブの室温での電気伝導率の測定による平均自由行程の評価を行った。すなわち、垂直磁化膜を用い周期化磁界を提供できる縞状磁区を持つ電極の形成を行った。しかしながらカーボンナノチューブと電極間の接触抵抗が非常に大きいことが明らかになり、より良好なコンタクト法を開発しなければならないことが明らかになった。電気伝導率の測定による電子の平均自由行程を評価したところ、電気伝導率と周期磁界の強さ、すなわち、垂直磁化膜の残留磁化間の関係、周期化磁界の周期の長さとの関係を明らかにした。さらに、カーボンナノチューブの種類及びこれらの性質の基板材料への依存性も検討した。しかしながら、実際の発光には至っておらず、今後、カーボンナノチューブと電極間の接触抵抗の低減、基板材料の最適化ならびに高い空間磁界を提供できる垂直磁化膜の材料に関する検討によって、コヒーレント電磁波の発生効率を高めていく。
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