研究課題/領域番号 |
23651146
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
本田 善央 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60362274)
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研究分担者 |
山口 雅史 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20273261)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ナノワイヤ / InGaN / MBE / フォトルミネッセンス / LED |
研究概要 |
本年度の予定では,GaNナノワイヤ上にInGaNナノワイヤの成長を行いInの取り込み量の制御と,加工Si基板へ架橋GaNナノワイヤLED構造の作製であった。しかしながら,要求される発光波長が500nm-600nmであり非常にInが多い系である。この場合,GaNとInGaNとのヘテロ接合により分極電場が発生し,発光効率の低下を招く可能性がある。そのため,計画を若干変更し,まずInGaNナノワイヤを直接Si基板に成長し,そのInの取り込みについて検討を行った。 RF-MBE 法によりバッファー層を介さずに,InとGaの気相比比および成長温度を変化させてInGaN ナノワイヤの成長を行った。InGaN ナノワイヤの成長において,成長温度を上げるほどナノワイヤの長さが短くなる傾向がみられた。このことから,成長温度が高温になるにつれて,In が脱離していることが予想される。次に各試料においてフォトルミネッセンス:PL測定を行った。その結果,Inフラックス比が低い13%の場合は,700℃ を超えるとIn が取り込まれずナノワイヤが発光しない。逆に,高In フラックス比30%の場合は、650℃で成長すると結晶はナノワイヤのような形状にならず,発光も確認されなかった。しかし,高温で成長するにつれ結晶はナノワイヤの形状になり,強い発光が確認できた。 成長温度700℃ の場合,In フラックス比が大きくなるにつれてPL ピーク波長は長波長側へシフトしたが,発光強度は弱くなった。これらのことから,高品質なInGaN ナノワイヤを得るには、In フラックス比に応じた最適な成長温度で成長する必要があると言える。架橋GaNナノワイヤは,様々な成長条件やプロセスを行ったが架橋するGaNナノワイヤを形成するには至らなかった。これは,GaNナノワイヤが基板に余り影響を受けない成長であることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請書の実施計画書では,GaNナノワイヤ上にInGaNナノワイヤの成長を行いInの取り込み量の制御を行うことにしていたが,より良いLED構造実現のためにInGaNナノワイヤを直接Si基板に成長することを検討した。このことにより,高In組成のInGaN層を低In組成のInGaNナノワイヤで挟むことでグリーンギャップと呼ばれる緑色領域で高効率で発光するInGaNナノワイヤヘテロ構造が得られる。この概念のもと,InGaNナノワイヤにおけるIn取り込みに関する研究を行い,Inの気相比と基板温度に関して重要な知見が得られた。 一方,加工Si基板への架橋GaNナノワイヤの成長に関しては,様々な条件のもとで成長を行ったが,期待した結果が得られず,ナノワイヤは基板側壁に対して斜めに成長しているだけでなく,通常のGaNでは成長しないSiの面方位に対しても成長することがわかった。このことは,別の見方をするとGaNナノワイヤが基板の面方位や基板の種類に依存せずに成長するということであり,今後違った目的においては非常に有益な知見が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に様々な成長条件下において成長したInGaNナノワイヤへのInの取り込み状況は確認できた。しかし,デバイス応用を見据えた場合にGaNナノワイヤあるいはInGaNナノワイヤへの不純物ドーピングを行う必要がある。そのため,電気伝導特性評価を行い,成長条件とキャリア濃度の関係や,不純物ドーピングによる結晶構造への欠陥等の影響について調べる。 これに平行して,LED構造作製のために高In組成のInGaN層を活性層としたInGaNヘテロ構造の作製およびpn接合の作製を行う。 架橋GaNナノワイヤの研究は,平成24年度も引き続き研究を行うが,これまで検討してこなかった窒素プラズマの条件を変更したり,Gaセルと基板との角度が影響している可能性もあるために,異なる装置での架橋GaNナノワイヤの成長を試みる。それでも不可能な場合は,触媒を使った架橋GaNナノワイヤを実現の可能性を調査する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度においても,平成23年度と同様にナノワイヤ成長において必要となる半導体材料,基板,液体窒素,ガス,薬品等に物品費を当てる予定である。残りは,昨年度の成果をもとに国際会議と国内会議への成果発表,ならびに印刷物等があればその印刷費に研究費を使用する予定である。
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