交通流解析手法としてのCellular Automaton(CA)する基礎構成 本年度は,割り込む車両に加え,従来のモデル化では全く顧慮されてこなかった割り込まれる車両の動力学を考慮し,2体ダイナミクスに基づく車線変更モデルを理論構成した.本モデルにより,既往モデルでは再現不可能であった,割り混まれる車両による割り込みを図る車両への動力学(例えば,車線変更を阻止しようと加速する,あるいは補助しようと減速する)のモデル化が可能となった.現実の交通流動では,単に割り込む車両の戦略だけでなく割り込まれる車両との2体相互作用が影響していることは自明であるから,本モデルかは車線変更CAモデルの高精度化に大きく資するものである. 制限速度80km/hの都市高速道路における長期間ビデオ撮影に基づく実測を行い,交通流動の基本特性を顕す基本図を得るとともに,走行車線と追い越し車線の車線占有率に関するデータを取得した.既往先行研究では,最高速度が120km/hの一般高速道路における観測データしか供示されていなかったが,基本図に見られる相転位の特徴は大略同傾向を示すことを明らかにした.また,前記した理論構成モデルの検証データとした.ネットワーク互恵による社会ジレンマの緩解・解消プロトコルの詳細理論解析 交通流により惹起される社会的な数理ジレンマとして常に裏切り戦略が支配するPrisoner's Dilemma(PD)が想定される.PDを緩解・解消させるためにはエージェント間の匿名性(Nowakの言う社会粘性)を減じさせることが重要となる.最終年度である本年度は,ネットワーク互恵をさらにenhanceする機構を複数提案し,一連のマルチエージェントシミュレーションおよび演繹解析を行うことで,ネットワーク互恵の基本的ダイナミクスを普遍的に解明する端緒を示すことに成功した.
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