研究課題
地震や台風などの自然災害が発生した場合,被害範囲・程度を早期に把握することは,緊急対応をとるために極めて重要である.我国は国土が狭いこともあって,災害状況の早期把握には,ヘリテレ映像や空中写真による航空リモートセンシングが多用されており,被害が広域にわたる大規模地震や,地上からのアクセスが困難な山間地域などの被害把握に力を発揮している.しかし,空撮による映像・画像は,可視域および近赤外域の光を利用しているため,太陽光のない夜間においては,基本的に情報収集が困難になる.一方,熱放射を観測する熱赤外センサは夜間でも利用可能である.本研究では,最近,小型化・高性能化してきている熱赤外センサによる空撮画像を用いて,建物倒壊や道路閉塞などの災害状況を把握する手法を検討した.2012年5月にはつくば市を中心とする地域で大きな竜巻被害が発生した.そこで,竜巻の2日後に空撮熱赤外画像の取得と現地調査を行い,これらを用いて建物被害の把握を試みた.まず建物輪郭データを作成し,事後空撮可視画像から建物被害を目視判読した.表面温度画像から温度勾配を計算し,建物輪郭内の温度分布,温度勾配を抽出した.無被害地区と甚大被害地区の建物の温度画像,温度勾配画像を比較することによって,両者の温度分布の違いを検討した.その結果,無被害建物では表面温度が全般的に高く個別の差異が大きいのに対し,被害建物では温度が下がり,個々のばらつきも小さい傾向にあることが確認された.建物屋根の表面温度は,材質,色,勾配,日照条件により大きな影響を受けるが,温度画像と温度勾配画像を組み合わせて用いることにより,とくに被害が屋根に現れる竜巻や台風による被害把握への利用が期待される.
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日本地震工学会論文集
巻: Vol. 12, No. 6(特集号) ページ: 63-72
http://ares.tu.chiba-u.jp/~papers/index.htm