研究課題/領域番号 |
23651164
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
柴崎 亮介 東京大学, 空間情報科学研究センター, 教授 (70206126)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2012-03-31
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キーワード | 衛星測位 / 位置認証 / 暗号化 |
研究概要 |
衛星測位技術はナビ案内システムだけでなく、鉄道の運行管理、船舶の自動操船、危険物の搬送管理、建設・農業作業の自動化、通行税の徴収など社会の安全に直接影響する領域で利用され始めている。しかし米国のVolpeリポートが明らかにしたように、民生用GPS信号は容易に偽造でき、利用者に気づかれることなく測位座標を外部から操作することが可能である。すなわち「位置情報ジャック」が実現できる。本提案では日本独自の準天頂衛星を利用する「真正性保証付き」測位サービス技術を世界ではじめて開発・実証した。すなわち、準天頂衛星から認証情報を暗号化して送信し、受信者はそれを復号することで、衛星から得られた正しい位置情報であることを確認するものである。(1)L1SAIF 信号を使った位置認証システムの開発と実証(1)QZSS・ L1SAIF 信号にパリティビットや暗号化されたシード値、公開鍵を挿入して認証を行うアルゴリズムの開発を行った。その際、時刻に基づくシード値生成方法を開発しセキュリティ強度を高める工夫を行った。(2)GPSシミュレータを利用して、実際の受信機を用いた位置認証実験を行い、成果を確認した。(3)また、受信機は複合・認証のソフトウェアを組み込むだけで、既存のハードウェアがそのまま利用できること、認証信号生成・送出メカニズムが準天頂衛星の地上局に容易に組み込めること、という制約条件を満足できることを確認した。(2)認証局の設計検討(1)認証局の機能・システム構成について検討し、認証信号生成・送出メカニズムが準天頂衛星の地上局に容易に組み込めること、という制約条件を満足できることを確認した。(2)実際のQZSSを使った実験(研究用L1SAIF信号を使用)を実施する計画をJAXAと立案した。衛星利用のスケジュール調整の結果、平成24年度に実施する計画となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)目的とした位置認証アルゴリズム、システムが完成し、GPSシミュレータと受信機を利用した実証実験を行い、目的通りの性能を保有していることを確認した。2)準天頂衛星の既存信号構造を変えることなく、位置認証を実現できることを確認した。その結果、スケジュール調整の関係上、実衛星を利用した実験は平成24年度にずれ込んだが、現在運用中の衛星及び地上システムを利用して容易に実装できることがわかった。さらに、既存の受信機をソフトウェアの改良のみで利用できることを確認した。これにより、実現可能性が非常に高いと判断できた。3)準天頂衛星を実際に利用した実験を実現できる目処が立った。その成果を利用して、社会へのアウトリーチ活動も実現できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は準天頂衛星を利用した位置認証システムの実証実験を行う。また、JAXAと共同して位置認証サービスの実現に向けた調査・研究を進め、準天頂衛星2号機以降へのサービス搭載計画を検討する。それにより準天頂衛星サービス区域である東アジア、東南アジア、オセアニア地域での位置認証サービスの展開を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
実衛星を利用した実験を行うために、認証信号を地上局に送出するシステムを構築する必要がある。そのためには、インタフェースの整備・調整などが必要であり、次年度研究費を使用する。
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