研究課題/領域番号 |
23651170
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研究機関 | 諏訪東京理科大学 |
研究代表者 |
須川 修身 諏訪東京理科大学, システム工学部, 教授 (60162856)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 相似則 / ツインタワー / 模型実験 / 煙突効果 / 高層建物 / 火炎性状 / 火災 / 物理モデル |
研究概要 |
本研究では、吹き抜け空間を展延・伝播する火災を工学的に実用可能な精度で予測できるモデルを構築することを目的とした。具体的には、吹き抜け空間を展延・伝播する火災を模擬した実験による火炎挙動の解明するため、寸法が可変できる高層建築物の模型を製作し、2 棟間の吹き抜け空間の幅、奥行き、火源位置、発熱速度を変化させて、吹き抜け空間の形状と火炎挙動を解明する。床面(1200mm×1800mm)の中心にLPGバーナー(正方火源,100mm×100mm)を設置した。火源を挟むように、壁(600mm×900mm)を床面と垂直に設置した。火源縁と壁の距離Sは0~400mmの範囲、発熱速度Qは1.5~6kWの範囲で変化させた。定常状態となった火炎をビデオカメラで5分間撮影し、火炎高さを読み取った。熱電対(K型)を用い、火源中心直上に0~900mmの範囲と、火源中心より壁と垂直方向に0~150mm(S=0mmの場合は0~50mm)の範囲で温度測定を行った。 S=100mmの場合は、火炎が左右に広がる現象が頻繁に見られ、壁なしの火炎と比べて、火炎幅が伸び火炎高さは縮む傾向があった。これは開放された方向から空気を巻き込み、火炎が左右に揺れるためと考えられる。S=0における火源中心軸上の上昇温度と移動距離の関係である。壁なし条件であるMcCaffreyの関係に比べて、プルーム領域の傾きが緩やかになった。また、壁の影響により、同じz/Qの2/5乗であっても、巻き込み空気の機構が変化し、変移領域の大きさが変化するため,自由境界で得られていた火炎温度分布の相似性は保たれなくなった。 S=100mmでは火炎は壁と垂直方向に揺れ、火炎高さが縮むことがわかった。S=0mmでは火炎が双方の壁に分かれて這うように伸びるため、温度で見ると発熱速度の大小に対する相似性が保存されなくなることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、(1) 吹き抜け空間を展延・伝播する火災を模擬した実験による火炎挙動の解明、(2) 建築物壁面材質が燃焼性状に及ぼす影響の解明の2つのステップにより研究を遂行している。(1)においては、吹き抜け空間の幅W(= 2 棟の模型の離隔距離)が変化させられるツイン高層委建物の模型を作成し、熱電対にて任意の点の温度が計測できるようにした。発熱速度及び空間の幅Wを任意に変化させ、実際に火炎高さ、温度を測定した。(2)においては、建築物壁面に使用されている建材の代表的な建材について、調査を行った。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、(1) 吹き抜け空間を展延・伝播する火災を模擬した実験による火炎挙動の解明、(2) 建築物壁面材質が燃焼性状に及ぼす影響の解明の2つのステップにより研究を遂行しいる。今年度は、(1)については、高層建物を模擬するため吹き抜け空間の幅W及び高さを変化させ、さらなるデータの蓄積を行う。また、温度、火炎形状を測定し、壁が火炎に影響を与える距離、壁面の大きさなどを明らかにする。(2)については、火炎の伝播挙動は、流体力学的効果のみでなく、火炎の伝播経路となる壁面の熱伝導率、可燃性熱分解ガスの発生量、熱流束の吸収率等にも依存する。そこで、(a)で選定した建材を10cm 角に切り出し、コーンカロリーメータ(ISO5660 規定)装置で発熱量,発煙量,限界着火熱流束,発生ガス等を計測し、その燃焼性を定量的に評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
(1) ツイン型高層建築物模型製作費用:本研究では模型実験を行うので、そのための模型製作費用とする。また、今年度は、壁面高さを変化させるため、壁面が倒れないための治具等が必用となる。(2)コーンカロリーメータ、GC-MS、 TG-DTA装置関係消耗品費:本研究ではコーンカロリーメータ、および熱物性把握のためにGC-MS、 TG-DTA装置を使用する。これらの装置を使用する際に必要となる校正ガス、各種フィルター、キャリアガス、抽出溶剤などの消耗品代を計上する。(3)壁面建材の購入費用:建築物壁面の材質による燃焼性状評価のため、建材を購入する必要がある。そのための費用を申請する。
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