断層破砕帯を構成する細粒物質の物理的性質に焦点を当てた研究はそれほど多くはない。しかし、電子顕微鏡の観察によれば、100ミクロン以下のサイズのものが多く確認されていて、通常の岩石や地層の粒度組成とは大きく異なっている。 このような細粒分は比表面積を大幅に増やす効果を持っている。また、このような細粒分はその間隙に多くの水分を保有することができる。細粒分を構成する粘土粒子の表面は一般に負に帯電していると考えられており、粘土粒子間には電気二重層を介した粒子間結合が生成される。 この結合構造は粒子間のファンデルワースによる分子間引力とクーロンによる電気的な斥力との合力で決定されると考えられるが、室内試験ではこのような材料が拘束圧下に置かれると圧密現象を引き起こし、時間と共に物性が変化する。一次圧密現象では間隙水圧の消散と共にバルクの体積収縮が終了する。しかし二次圧密過程では、更なる収縮が時間と共に進行していく。この二次圧密現象のメカニズムは必ずしも明らかにはなっていないが、強度やスティフネスが増加することが知られている。 二次圧密過程において、せん断分極(SIP)強度も大きくなることを確認しており、これは二次圧密現象のメカニズムを考える上で、きわめて重要な示唆を与えることになる。すなわち、せん断によって、上記の結合構造が乱されることによって分極が発現し、その大きさが時間と共に増加することから、二次圧密過程において粒子間の電気的化学的構造が時間と共に成長することになる。この電気化学的構造変化は、二次圧密過程で獲得される強度増加やスティフネスの強化と密接に関連すると見られる。 結局、粒子間の接触部周辺の電気化学的結合構造の問題に帰着することが明らかになった。
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