研究課題/領域番号 |
23651175
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
小川 泰浩 独立行政法人森林総合研究所, 水土保全研究領域, 主任研究員 (50353628)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 雲仙普賢岳 |
研究概要 |
雲仙普賢岳噴火災害後も長期にわたり断続的に発生する土石流等の土砂流出に対する発生実態を解明するために、雲仙普賢岳中腹の火砕流堆積地の2流域(炭酸水谷・極楽谷)のガリ壁より湧出する各1地点を2011年7月8日に現地で確認し、7月25日より定点撮影カメラで湧水点のインターバル撮影を行った。湧水点近傍と湧水点周辺のガリ壁面を撮影する定点撮影カメラを設置し、湧水点で湧出状況を観測し、ガリ壁面カメラで湧水点上方の地形変化を観測した。湧水点の標高は、極楽谷が639m、炭酸水谷が660mであり、湧水点は、どちらの谷も火砕流堆積物と旧山体堆積物の境界であった。湧水の電気伝導率と水温を計測し、その結果、2011年7月の極楽谷では電気伝導度と水温がそれぞれ10.3mS/m,18.5度を記録し,炭酸水谷では6.8mS/m,16.0度を記録した。この測定値により湧水が表流水ではなく地下水となっていることを確認した。。カメラの観測結果から、どちらの谷のガリともにカメラ設置後、湧出が次第に減少し、増加減少を繰り返す変動はなかった。炭酸水谷では8月4日、極楽谷では8月5日に湧水がほぼ停止した。炭酸水では流路の屈曲点に位置しており、流水や土砂流出の直撃から避けられる地形であるため、湧水流量変動が観測可能なので当初計画にはないが流量観測装置の設置を検討する。湧水が停止した時期は判明したが、開始した時期がカメラ設置前で不明なため、極楽谷では湧水流量変動が観測可能なので当初計画にはないが流量観測装置の設置を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
土石流の発生状況から仮説に基づいた湧水発生想定エリア付近に湧水を確認し、湧水が消失する時期を明らかにしたことが、本研究を提案した研究目的と合致する初年度の成果である。しかし、湧水点のガリでは、夏季や梅雨期の降雨によって冬季にカメラ設置点上方からの落石や土砂崩落でカメラが短時間で埋没すると予想されたが、昨年度のガリ上部に設置した観測カメラによって、降雨よりも冬季のガリ壁面の凍結融解作用で予想以上に土砂崩落が進むことが判明した。ガリ壁面の凍結融解作用によって土砂が崩落しやすいため、今年度は冬季に埋没したカメラ付近の土砂の撤去を行ってから、湧水点の定点カメラの観測を行う必要があるが、今年度も湧水観測が可能である。
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今後の研究の推進方策 |
湧水が停止した時期は判明したが、湧水開始の時期がカメラ設置前となりわからないため、降雨強度と湧水発生の関連性について検討出来なかった。炭酸水のガリ湧水点に設置したカメラは、上流からの土砂流出や流水の直撃を受けにくく流出しにくい場所なので、湧水量の変動が観測可能であると判断された。そこで、当初計画にはないがより詳細に流量変動の検討が行える流量観測装置の設置を検討する。降雨強度と湧水の関連性を明らかにするため、湧水点付近に雨量観測を行う事が望ましいが雨量計の設置場所が土砂崩落しやすい場所のため、設置を断念した。下流の標高360m付近にある本研究担当者が設置した雨量計と気象庁アメダス雨量計(雲仙地域気象観測所)の観測データを使用していたが、長崎県の岩床山観測点が湧水点に位置と標高(680m)が最も近いため、昨年度より10分雨量データ提供を申請し、利用許可を得た。これにより湧水付近の詳細な雨量が明らかになることが期待出来る。
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次年度の研究費の使用計画 |
湧水開始の時期が梅雨前であったため、カメラ設置前の実態がわからないため、降雨強度と湧水発生の関連性について検討出来なかった。極楽谷のガリに設置したカメラは、上流からの土石流で流出しにくい場所で、湧水量の変動が観測可能であると判断されるため、詳細な流量変動の検討が行える流量観測装置の設置を検討する。土砂が崩落し埋没する危険性が高い場所にカメラを設置しているため、現地に向かう頻度とカメラメンテナンスにに時間を要するため、昨年度よりも旅費を使用する。
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