雲仙普賢岳噴火災害後も断続的に山腹で発生している大規模崩壊と豪雨時に発生する地下水の関連性を明らかにするために、雲仙普賢岳中腹の土石流発生エリアと考えられる2流域の火砕流堆積地(炭酸水谷:標高660mと極楽谷:標高639m)のガリ壁から発生している湧水(各1地点)を2011年7月8日に現地で確認し、7月25日から定点撮影カメラのインターバル撮影(2~3時間間隔)を開始した。 各湧水点に対して湧水点の近接撮影と対岸からの遠隔撮影を行った。2011年のカメラ設置後の湧水点では、ともに次第に湧水が減少し、ほぼ同時期に停止し、その後の降雨で流量が増加減少を繰り返す変動はみられなかった。2011年の結果では湧水が次第に減少し停止した時期は判明したが、湧水開始時期がカメラ設置前で不明であった。そこで炭酸水谷湧水点で2012年春季から流量変動の定量観測を行える転倒ます流量観測装置を追加設置した。2012年の出水でガリ底面が5m侵食を受けた結果、梅雨前の5月に設置した湧水点の近接カメラと流量観測装置が流出しデータが欠測した。各湧水点の遠隔カメラの記録から激しいガリ侵食は6月24日6時~9時に発生したことが判明した。このとき集中豪雨が発生しておりアメダス雲仙岳(標高678m)のデータによると午前6時から7時の2時間雨量は95.5mm、湧水点下流の極楽谷右岸雨量データ(標高365m)では同じ2時間に111.5mmが記録されており、極楽谷湧水点遠隔カメラでも同じ時間の出水でガリ侵食(2mの地盤低下)が確認された。湧水点付近が2-5mも低下する前年にはない地盤変動が1回の集中豪雨で発生した。現在も立ち入りが規制された雲仙普賢岳の山腹斜面では短時間の豪雨で激しい地盤変動が発生しており、依然として豪雨時には山腹斜面の不安定化を示唆する現象が見られることを本研究で明らかにした。
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