研究課題/領域番号 |
23651179
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
和泉 薫 新潟大学, 災害・復興科学研究所, 教授 (50114997)
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研究分担者 |
河島 克久 新潟大学, 災害・復興科学研究所, 准教授 (40377205)
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キーワード | 表層雪崩災害 / 表面霜 / 弱層 / 過冷却水滴 / 人工雪崩 |
研究概要 |
本研究は、降雪がなく放射冷却などで氷点以下の低温状態にあって積雪表面が過冷却霧に覆われた場合、過冷却水摘の付着による液相状態の水からの表面霜の結晶成長が急速に進行し、表層雪崩のすべり層となりうる薄い弱層が雪面に形成される過程を、低温質での室内実験及び積雪寒冷山地での現場観測から実証することを目的としている。 低温室実験での、超音波加湿器で過冷却微水滴を発生させ雪表面に供給し表面霜の発達を促す実験において、表面の雪の状態によってそこに形成される霜の結晶に違いが生ずることがわかった。雪面が降りたての新雪状態か、または大気中の過剰水蒸気が昇華凝結して小さいながらも既に表面霜が形成されている場合には、過冷却水滴の供給によって表面霜が成長・発達するが、堆積した後に等温変態過程などを受けた旧雪表面に過冷却水滴を供給した場合には、水滴の凍結で樹霜の結晶が形成され、顕著な表面霜の結晶にはならないことがわかった。 この実験結果は、積雪寒冷山地において過冷却水滴の付着によって表面霜の結晶成長が急速に進行し、表層雪崩のすべり層となりうる薄い表面霜の弱層が雪面に形成されるためには、気象条件の組み合わせが必要であることを示している。すなわち、快晴夜間の放射冷却で大気中の水蒸気の昇華凝結により雪面に表面霜が形成された後、またはrimingの少ない結晶表面が滑らかな新雪が堆積した直後に、濃密な過冷却雲に覆われて過冷却水摘が積雪表面の雪や霜に付着・凍結して表面霜が急速に発達するというシナリオが考えられる。 このような気象条件で形成された表面霜の上に、すぐに大量の新雪が堆積すれば、この表面霜を弱層とする表層雪崩は発生しうる。よって気象推移に3ステップが必要であることから表面霜を弱層とする表層雪崩の発生は、頻度的にそう多くないと言えよう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、表層雪崩の発生原因となる表面霜の形成が、大気中の水蒸気の雪面への消化凝結による気相聖兆ばかりでなく、過冷却微水滴の凍結・結晶化による影響が大きいことを、低温室内実験及び積雪寒冷山地での現場観測から実証することを目的としている。 低温室内実験では、超音波加湿器により過冷却微水滴をはっせいさせ雪表面に表面霜が形成される微気象条件やもとの雪表面の状態で形成される霜結晶にちがいがあることを把握することができた。しかし積雪寒冷山地での実験観測は、平成24年度に購入したファン付き霧発生装置が予備実験の段階で、給水パイプやノズルなどで凍結して一部破損してしまったことに加え、研究代表者の入院後の病状回復が思わしくなく積雪寒冷山地における長時間の実験観測が無理と診断されたため予定していた達成度には到達できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に購入したファン付き霧発生装置を使って、氷点下の気温下で噴霧実験を継続的に行ったところ給水パイプやノズルなどで凍結して一部破損してしまったことから、それらの部分の断熱処理など改良を施した上、平成25年度冬期に積雪寒冷山地の雪崩危険斜面(のり面)に対し同装置により過冷却微水滴(霧粒)を噴霧し、液相状態の水からの発達した表面霜を形成し、その後の降雪による表層雪崩発生の可能性を見極める実験観測を行う。 積雪寒冷地での実験観測は、冬期の気象推移に大きく影響されるため、気象条件によっては斜面積雪表面に弱層となりうるまで発達した表面霜を形成できない可能性もある。そのような場合も考慮し、低温実験室での実験結果も踏まえ、表面霜が形成される可能性の高い積雪寒冷山地の気象的・地形的特性及び、過去に発生した表面霜が褥瘡と推定される表層雪崩の発生までの詳しい気象推移について明らかにすることを研究項目として加える。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度冬期に、積雪寒冷山地の雪崩斜面付近において、平成24年度に購入したファン付き霧発生装置を用いて斜面積雪表面に過冷却霧を噴霧し、表面霜の形成、及びその後の降雪による表層雪崩発生の実験観測を行う予定なので、その際の協力学生への謝金や調査旅費に使用する。
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