研究課題/領域番号 |
23651181
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
馬場 信弘 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10198947)
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キーワード | 土砂災害 / 防災 / 乱泥流 / 重力流 / 計算流体力学 |
研究概要 |
地球温暖化に伴う異常な集中豪雨によって頻発し始めた大規模な土石流に対して,その対策の方向性と防御のための具体的な方法を提案するため,実験と計算によるシミュレーションを行ってその防御システムの実現可能性について検討を行った. 前年度は,比較的小規模な障害物を複数設置することによって重力流のエネルギーのかなりな部分を散逸させる実験を行ったが,今年度は,その実験の再現性を高めるため,エアジェットを用いて粒子群を一定の条件で流動化するための装置を開発し,30度まで傾斜する水槽を用いて土石流を高い精度で再現することができるようになった.また,実験と同じ条件で計算を行うため,分散相内の相互作用が重要となる固体状態から相互作用が無視できる浮遊状態まで,粒子群の体積割合に応じて,サブグリッドスケールの応力としてモデル化を行った.このモデルを導入した計算によるシミュレーションによって,土石流の威力をそぐために効率の良い障害物の形状と設置方法について検討した. その結果,土石流が障害物と干渉すると,土石流の内部に含まれる砂粒子の割合や土石流の先端速度が大きく変化することが明らかになった.その時間的,空間的な変化についての実験と計算の結果は必ずしも定量的に一致するとは言えないが,障害物による土石流のエネルギーの変化量については定性的に一致することが示された.エネルギーの減少量は,同じ規模の障害物であってもその設置する位置や間隔によって大きく変化することから,土石流の後方から先端部にエネルギーを供給する過程が土石流全体のエネルギーの変化にとって重要であることが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
土石流が障害物と干渉すると,実験と計算の結果は必ずしも定量的に一致しない.障害物によって土石流の内部に含まれる砂粒子の割合や土石流の先端速度が大きく変化するが,計算によってそのときの土石流の内部構造の時間的,空間的な変化を捉えられないためであると考えられる.これを改善するため,当初の予定よりやや遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
実験結果と計算結果の密度分布を比較した結果,密度の不連続面を通る連続相が連行されるところで両者の差が大きくなることから,その不連続面における連続相の流束が重要であることが明らかになった.TVDタイプのスキームでは界面における振動は抑えられるけれども,数値散逸の影響も大きいため, この現象を定量的に十分な精度で再現するために,サブグリッドスケールの界面が捉えられるようにスキームを改善する. これらによって改善された計算と実験によるシミュレーションによって,土石流の被害を抑える具体的な方法を検討し,そのシステムの実現可能性と有効性を検証する.
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次年度の研究費の使用計画 |
計算および実験の遂行のための物品費,補助員を雇用するための人件費を計上する.
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