研究概要 |
減数分裂期組換えにおいては高頻度組換え部位が形成されるが、そのような部位に共通する塩基配列はこれまで見出されていない。そこで本研究では、ゲノムワイドの解析が行われている出芽酵母やマウスの高頻度組換え部位を対象として、DNAの物理的特性の解析をはじめとした各種の解析を行い、クロマチン内の特定の領域に組換え部位が形成される分子的背景を明らかにすることを目的としている。さらに、その分子的背景がヒトゲノムにも存在するかどうかを検討する。 本研究では当初、以下の4つの中課題を設定した。1. 高頻度組換え部位の物理的特性(柔軟特性)の解析、2. 高頻度組換え部位の高次構造の解析、3. 高頻度組換え部位のクロマチン構造の解析、4. 高頻度組換え部位の必須最小要素の解析。平成23年度は、これらのうち、中課題1と2を集中的に実施した。中課題1では、出芽酵母で明らかにされた高頻度組換え部位3,604箇所(Pan et al.: Cell 144, 719-731, 2011)、およびそれらの周辺領域を対象として、DNAの柔軟特性のコンピュータ解析を行なった。解析には、独自に開発したコンピュータプログラム(GEN07)を使用した。その結果、特異的組換え部位内には極めて硬い特性を持つDNA配列が、他の領域に比べて多く含まれていることが示唆された。現在、マウスにおける高頻度組換え部位約10,000箇所(Smagulova et al.: Nature 472, 375-378, 2011)についても同様の解析を進めている。また、中課題2では、ゲノム上のベントDNA領域を検出できるコンピュータプログラム(GAK12)を独自に開発した。現在、このプログラムを用いて、高頻度組換え部位とベントDNA構造の間の関係について解析を進めている。
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