研究課題/領域番号 |
23651186
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研究機関 | 麻布大学 |
研究代表者 |
森田 英利 麻布大学, 獣医学部, 教授 (70257294)
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研究分担者 |
服部 正平 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (70175537)
藤 英博 九州大学, 生体防御医学研究所, その他 (10353468)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 個体識別 / 腸内細菌叢 / UniFrac解析 / オランウータン |
研究概要 |
野生動物保護や害獣管理には、個体識別が重要である。個体識別法として、標識による識別、個体ごとの視覚的特徴による識別などがあり、生態学、野生動物学および行動学に一定の成果を上げてきた。しかし、それぞれ問題点や不確定な要素が否めないとの指摘もあり、より質の高い、違った視点からの野生動物の個体識別法が望まれている。本研究では、対象の動物を捕獲することなく個体別の採取が可能な糞便に着目し、腸内細菌叢を指標とした新規なオランウータン個体識別法を検討した。各動物園で飼育されているオランウータン糞便から経時的に抽出したDNAの16S rDNA(V1-2)を用いたバーコードシークエンシング(Roche 454)を行った。得られたリードから選抜したクオリティの高いリードを用いてOTUやUniFrac解析を行い、個体識別マーカーとしての有用性を評価した。まず、採取したオランウータン糞便を用いて、細菌構造を比較するパイプラインを構築した。網羅的な16S rDNAの配列によるOTUやUniFrac解析の結果、ほぼ全ての検体において、菌叢の系統学的距離は同一個体間で最小であった。このことから、本手法はオランウータンの個体識別手法として有効であると推察される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
動物園で飼育されているオランウータンにおいて、年齢や雌雄、系統のわかっている32頭分の糞便をサンプリングできた。その内、28頭分については予定どおり3回のサンプリングを終了し、4頭分についてはすでに2回のサンプリングを完了し、2012年6月中には3回目のサンプリングを行う予定である。サンプリングと解析は同時進行しており、現在までの結果から、本手法により個体識別が可能である知見が得られてきた。そこで、「おおむね順調に進展している」という自己評価にした。
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今後の研究の推進方策 |
32頭のオランウータンについて、3回分の糞便をサンプリングする予定である。現在、飼育環境中での餌について、各園に問い合わせ中である。また、申請書どおり、インドネシア政府と折衝を開始し、野生のオランウータンの糞便を日本に輸送する許可を申請中である。それと同時に、インドネシアからの安定的な細菌DNAの輸送方法についても検討中である。
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次年度の研究費の使用計画 |
32頭のオランウータンの3回分の糞便を用いて、細菌叢の網羅的16S rDNAシークエンスを行い、UniFrac解析を行う。また、インドネシアから野生のオランウータンの糞便が入手できれば、その解析も同時に行う予定である。
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