1)X不活性化可視化マウスを用いたランダムX不活性化・X再活性化過程のイメージング解析。X染色体不活性化のプロセスを可視化するES細胞・マウス個体を利用し、in vitro分化系、および個体発生の時系列に沿った不活性化現象の解析を行った。マウス胚の蛍光レポーター発現観察から、刷り込み型不活性化状態からの再活性化のタイミング、ランダム型の不活性化の開始時期に関する知見を得た。 2)X不活性化可視化マウスを用いた各臓器における不活性化偏在パターンの検索。X不活性化可視化マウスの臓器を観察すると、赤色、緑色を呈する細胞が均一に存在する場合と明らかに偏在が認められる組織・器官が存在していた。このような偏在の起源と生物学的意義を調べるため着床後胚、胎児、成獣における不活性化パターン画像を取得した。その一部に関してより詳細な解析を行い、光学切片から、3次元構築を行い、臓器における偏在パターン情報を集積した。 3)偽常染色体領域のエピジェネティック状態の解析。不活性化を免れる偽常染色体領域を含んだX染色体全体に関して、そのエピジェネティック状態を決定することを計画した。そのために、H3K27me3、H3K9me3などのヒストン修飾に関するChIP-Seq解析を行なった。Xistノックアウトマウスと日本産亜種マウスであるMSM/Ms系統の雑種雌マウスから臓器を摘出し、これを材料として解析を行った。この実験系では、ChIP-Seqの結果のシーケンスリードがどちらのX染色体由来かを判断できる。現在まで、偽常染色体以外の領域については、結果を得ることに成功した。偽常染色体については、一部配列が未決定の部分があるので、それが判明次第、ChIP-seqの結果が得られる予定である。
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