研究課題/領域番号 |
23651190
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮本 悦子 東京大学, 医科学研究所, 特任准教授 (70327708)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | プロテオーム / 次世代シーケンサー / インタラクトーム / IVV |
研究概要 |
宮本らは、IVV法とサンガー型DNAシーケンサーを組み合わせ、プロテオーム解析を行ない、成果を挙げてきた。しかし、細胞の全インタラクトーム解析を目的とした大規模解析には、個別に標的タンパク質(baitと呼ぶ)の調製を必要とする従来のIVV法は不向きである。新しい方法(IVVスクエア法)では、ライブラリーに含まれる全てのmRNA-タンパク質対応付け分子がbaitになるため、全タンパク質間相互作用を一挙に行える。23年度は、IVVスクエア法を考案し、その立ち上げを試みた。 (1) IVVスクエア開発の初期検討 (リンカーDNAとターゲット遺伝子の連結) モデル遺伝子として転写因子であるFosとJunの相互作用領域を用いた。まず、PCRにより、ターゲット遺伝子配列とDNAリンカーとの連結実験を行なったところ、DNAリガーゼ依存的にPCR産物が得られ、検証した連結反応は正しく進行したことが確認された。 (2) IVV分子同士の連結 次の段階として、無細胞翻訳系で合成されたFosとJunに対応するIVV分子の精製法とIVV分子を基質として用いた一連の酵素反応についての検討を行った。精製したIVV分子のmRNA部分を逆転写し、相補的なDNAを合成した。その後、回収したFosおよびJunに対応するIVV分子を含む溶液にDNAリンカーを添加し、DNAリガーゼを用いて連結反応を行った。さらに、RNA分解酵素を用いてIVV分子のmRNA部分を分解し、DNAポリメラーゼを用いて伸長反応を行った。最後に、FosおよびJunをコードする塩基配列に特異的に結合するプライマーを用いてPCRを行った。PCR後、目的産物の長さに相当する300‐400bpの塩基長をもつDNAのバンドをアガロースゲル電気泳動にて観察した。今後、この領域からの目的分子の同定と効率的に分子選択を行う為の条件検討をしていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
相互作用する目的の蛋白質をコードする遺伝子同士をPCRにより連結させることに成功しており、IVVスクエアの実現の可能性を示す事が出来た。
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今後の研究の推進方策 |
これまでのIVVスクエアの検討で、相互作用する2種類の遺伝子をPCRにより連結させる事に成功しているが、次年度ではさらにこれを進めて、相互作用しているIVV分子とIVV分子の複合体を、区画化された油滴エマルジョンなどに封入させ、PCRを行うことを計画している。こうする事で、非特異的な対応付けを格段に低下させる事が出来、次世代型IVVの解析精度を飛躍的に向上させることが出来るものと期待される。技術確立後は、mRNAライブラリーを用いた蛋白質- mRNAおよび蛋白質-蛋白質相互作用解析を試みる。最初の試みでは、ヒト脳由来のmRNAライブラリー等を用いる。それは、すでに従来型のIVV法を用いて、このmRNAライブラリーに於ける蛋白質-蛋白質相互作用解析を遂行済みであり(Miyamoto- Sato et al., PLoS One, 2010)、本実験によって得られた新たな相互作用データと、比較検討することが可能だからである。本提案研究の範囲では、実験技術の確立が目的であること、および申請予算との兼ね合いから、DNA塩基配列の解析は次世代型シーケンサーではなく、サンガー型シーケンサーで行なう。
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次年度の研究費の使用計画 |
試験管内での組み換えDNA実験に必要な消耗品(合成オリゴDNA、研究試薬、プラスチック類などごく一般的なもの)、および成果を報告するための旅費などに使用する。
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