研究課題
我々は、これまでin vitro virus(IVV)法とサンガー型DNAシーケンサーを組み合わせ、高精度なタンパク質間相互作用解析法を確立して来た。しかし、従来のIVV法では個別に標的タンパク質(ベイトと呼ぶ)の調製を必要とするため、細胞内の全タンパク質間相互作用を解析することは困難である。本研究で開発している新たな方法(IVVスクエア法)では、ライブラリー内全てのIVV分子がベイトとして機能できる。その結果、細胞内の全タンパク質相互作用を一挙に解析することが可能となる。24年度は、23年度に確立した、相互作用する目的のIVV分子どうしをリンカーDNAとPCRにより結合し分子間相互作用を検出する方法(近接ライゲーション法)を用いて、IVVスクエアの解析を行い、その結果を基に動的インタラクトーム解析を行う予定であった。しかし、この方法を用いてIVVスクエアの初期解析を行ったところ、多くの複雑な行程による実験の長期化といった問題点が浮かび上がってきた。そこで、計画を変更し、より実用的な解析法を検討することにした。具体的には、IVV分子―IVV分子複合体を油滴内に1分子だけ封入し、その中でPCRを行うことで分子間相互作用を検出する方法(エマルジョンPCR法)により解析を行う。この方法を用いれば、実験手順を大幅に短縮出来るだけでなく、特異的な相互作用を効率よく検出することが可能となり、IVVスクエア法の解析精度を飛躍的に向上できると考えられる。これまでに、エマルジョンPCRによる解析を想定した予備的な実験において、目的の分子どうしが相互作用すること、さらにその相互作用がコントロールと比較して30倍以上の濃縮効率を示すことを確認している。次年度は、エマルジョンPCR法を用いたIVVスクエア解析技術を確立し、動的インタラクトームを解析する予定である。
2: おおむね順調に進展している
エマルジョンPCR法を想定した、目的のIVV分子どうしの相互作用複合体の精製方法をほぼ確立しており、精度が高く実用的なIVVスクエア技術の確立が現実的なものとなりつつある。
これまでに行った、エマルジョンPCRによるIVVスクエア解析を想定した予備的な実験において、目的の分子どうしが効率よく相互作用することを確認している。次年度は、相互作用した目的のIVV分子―IVV分子複合体を油滴内に1分子ずつ封入する条件を検討し、エマルジョンPCR法を用いたIVVスクエア解析技術を確立する。IVVスクエア法の確立後はまず、ヒト脳由来のmRNAライブラリーから合成したIVV分子ライブラリーを用いて、タンパク質―mRNAおよびタンパク質―タンパク質の相互作用を解析する。我々はこれまでに、従来型IVV法を用いた当該mRNAライブラリーにおけるタンパク質―タンパク質相互作用の解析を完了しており(Miyamoto-Sato et al., PLoS ONE, 2010)、本実験で得られた新たな相互作用データと直接比較することが可能である。本提案研究の範囲では、実験技術の確立が目的であること、および申請予算との兼ね合いから、DNA塩基配列の解析は次世代シーケンサーを用いず、サンガー型シーケンサーで行う。
試験管内での組換えDNA実験に必要な消耗品(合成オリゴDNA、研究用試薬、プラスチック類などごく一般的なもの)、および成果を報告するための旅費などに使用する。
すべて 2012 その他
すべて 雑誌論文 (3件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 2件)
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