研究課題/領域番号 |
23651194
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
青田 聖恵 (浦 聖恵) 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80289363)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | Dnmt3b / Nkx2-5 / DNAメチル化 / 心臓形成 |
研究概要 |
DNAのメチル化は、哺乳類では発生段階や癌化に伴って、その状態は変化することから、発生・分化や疾病との関連で長年注目されてきた生命現象であるが、未だにゲノムDNAの特定の領域をメチル化する制御機構と、また第二に発生・分化との具体的な繋がりは不明である。私達は "哺乳類のDNAメチル化酵素Dnmt3bの発現抑制が、正常な器官形成やその機能維持に重要である"と考え、この仮説を心臓形成過程でCre組み換え蛋白質遺伝子の作用によってDnmt3b遺伝子発現が誘導されるトランスジェニックマウスの解析によって実証することを目指す。 本年度は、Cre/lox組み換えによってDnmt3b遺伝子の発現が誘導されるトランスジェニックマウスと心臓形成の主要転写因子であるNkx2-5遺伝子座にCre組み換え遺伝子を挿入したノックインマウスNkx2-5/Creマウスとの交配を実施して、胎仔期から心臓特異的にDnmt3bを過剰発現するマウスの作成を試みた。その結果、生まれてくるマウスにDnmt3bを過剰に発現するマウスが1匹得られたが、体型が小さく虚弱であった。導入遺伝子がCre/lox組み換えによってDsRedからGFPの発現に切り替わるように細工したので、その蛍光の変化を得られた個体で調べた。しかし組換え個体でGFPの発現が認められなかった。一方で、RT-PCRではCre/lox組み換えによってFlag-Dnmt3bの過剰発現が確認された。シングルヘテロのマウスは容易に得られるのに、ダブルヘテロで導入遺伝子がCre/lox組み換えによってDnmt3bがNkx2-5遺伝子発現細胞で過剰に発現する個体がほとんど生まれてこない。この結果から、予想したように、胎仔期心臓でのDNAメチル化酵素の過剰発現が正常な発生・分化を乱している事が示唆される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
Nkx2-5発現細胞でDnmt3bを強発現させた場合に、生まれてくる個体がメンデルの法則に外れてほとんど見られない結果を得る事は、仮説を示唆する結果であった。しかし2種類のトランスジェニックマウスの交配で、ダブルヘテロは遺伝子組み換えによってDsRedからGFPの発現に切り換わり、視覚的に遺伝子発現変化が追跡できるように意図してマウスを作成したが、実際にはDsRedは上手く個体で機能したが、遺伝子挿入は確認されているのにGFP発現への切り換えが確認されなかった。この結果は作成したマウスラインTg(loxDnmt3b)に予期していない変異がもたらされている可能性がある。そこで導入遺伝子の条件的な発現の確認をしっかり行うことにした。組織の免疫染色では、導入したFlag-Dnmt3b遺伝子の発現はダブルヘテロマウスにおいてFlag抗体を用いて確認された。さらに導入遺伝子の過剰発現が予想される心臓からタンパクを調製し、タンパクレベルでDnmt3bの発現をウェスタンブロットによって確認する事を試みた。しかしタンパクを十分調製できずに確認に至っていない。ダブルヘテロマウスは出生後はなかなか得られないので、胎仔きでの解析に移行したが、動物施設のトラブルで交配貝解析の進行が遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
作成したトランスジェニックマウスが正しくNkx-2.5発現細胞でDnmt3bタンパク質を強制発現している事の確認を第一に行う。ダブルヘテロマウスは生まれてこないので、胎性中期の心臓でCre/lox組み換えによってDnmt3b遺伝子の発現が誘導される事をタンパクレベルで確認する。発現確認次第、心臓形成阻害の出現するステージを明らかにし、当初の計画に従って以下の解析を進める。(I)Dnmt3b過剰発現による遺伝子発現異常の解析:Dnmt3b過剰発現したた心臓からRNAを調整し、野性型マウスと比較して遺伝子の発現パターンをゲノムワイドに解析する。その結果、過剰発現したDnmt3bのターゲット遺伝子の候補を検討する。(II)過剰発現したDnmt3bのゲノム分布の解析:特にDnmt3bの過剰発現によって遺伝子発現が抑制された遺伝子の中で、直接Dnmt3bが結合しているターゲット遺伝子をChIP法によって同定し、ゲノムワイドの解析に発展させる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
ゲノムの組み換え確認および遺伝子発現の生化学的な解析のための試薬消耗品に使用する。
|