研究課題
本プロジェクトでは、RNAポリメラーゼIIのS2およびS5リン酸化抗体を用いたChIP-Seqによる高精度遺伝子座同定法(ADT法)を、Helaを用いて行った。S5リン酸化抗体を用いたChIP-Seqの結果は、従来の予期された通り主に転写開始点直近の上流に分布していた。また、S2リン酸化抗体を用いたChIP-Seqの結果は、転写開始点から転写終了点までを効率よくマーキングしており転写産物を反映していることが示唆された。これらの知見は従来のRNAポリメラーゼIIの報告と合致しており、本法がRNAポリメラーゼIIのゲノム上での挙動を精密に捉えていることが明らかとなった。更にマウスES細胞(mES)でも同様の解析を行いほぼ同様の現象が起こることを確認した。更に、Hela及びmES産物との細胞の両社でmRNA発現との相関性を解析するため、我々はmRNA-seqによるトランスクリプトーム解析を行い、同定された転写産物との分布を解析した。その結果、ゲノムへのマッピングの際の重複を排除した最も厳しい形でのトランスクリプトームの場合ではHelaの場合、3169遺伝子の発現を検出したが、ADT法によりS 2およびS5リン酸化RNAポリメラーゼIIが重複する領域を同定したところ少なくとも9804遺伝子の発現を認めた。mES細胞では予期を大幅に上回り12000遺伝子以上の発現を確認した。これは、実際に発現した遺伝子のうち、30%程度しかmRNAとして認識されないことを意味している。定量的RT-PCRで検証したところ98%でその発現が確認できたことから、ADTによる探索が有効であることを裏付けた。これらの知見のうちHela細胞を用いたS2P、S5PによるADT法については報告を行った(Odawara et al BMC Genomics 2011)。また、mESについては現在投稿準備中である。
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