MicroRNA (miRNA)やsmall interfering RNA (siRNA)などの小分子RNAは、1分子種で数百~数千の遺伝子の発現を抑制しているが、その抑制の程度は小分子RNAの配列や構造の違い、あるいは標的mRNA側の要因によって多様に制御されている。そのため、小分子RNAは非常に複雑な遺伝子発現の調節をしている。そこで、本研究では、RNAサイレンシングの素過程における小分子RNAによる遺伝子抑制の分子機構を明らかにし、それに基づいて、遺伝子ネットワークの大きな変動をシステマティックに定量化することを目的とした。 まず、我々はsiRNAによるオフターゲット効果はシード領域の塩基配列に依存し、その程度はシード領域の塩基対合の安定性に依存していることを報告していた。しかしながら、予備的解析からは、miRNAはsiRNAとは異なり、その抑制効率と、シード領域と標的mRNAの対合エネルギーとの相関は認められなかった。siRNAとmiRNAの大きな違いは2本鎖状態での形が完全に対合しているか、あるいは不完全に対合しているかであり、このような構造の違いによる1本鎖化への解離エネルギーの違いを考慮し、抑制効率との相関を定量的に解析した。 また、本来のmiRNAの抑制効率を解析するためには、すでに細胞内でサイレンシングを起こしている内在性miRNAの影響を無視することはできない。そのため、内在性miRNAによるゲノムワイドな遺伝子発現制御機構についてもマイクロアレイを用いた解析を行った。
|