研究課題
ヒト腸管では、複数の細菌が宿主免疫系と複雑に相互作用しており、どの細菌がどのタイミングでどの程度定着するとどのように宿主免疫系が影響を受けるかという作用機序については不明な点が多い。本研究では、ヒト乳幼児において前向き調査研究を行い、アレルギー発症を助長している腸内細菌、あるいは逆に、アレルギー発症抑制に働く細菌の候補をリストアップし、それらの細菌についてex vivo実験において、どのように宿主免疫系に影響を与えているかを調査した。平成23年度は、新生児232名を対象とした前向き調査研究で、生後1か月後の糞便細菌叢と生後2年間のアレルギー発症状況の関連性を調査した。糞便細菌叢についてはアレルギー発症児71名と非発症児56名の糞便サンプルを細菌16S rRNA遺伝子アンプリコンの大量配列解析により解析した。その結果、バクテロイデス属細菌がアレルギー発症児に有意に多いこと(p=0.001)、逆に大腸菌群がアレルギー非発症児に多い傾向(p<0.1)にあることが示された。平成24年度は、バクテロイデス属細菌と大腸菌のリポポリサッカライドを精製し、マウスパイエル版の樹状細胞に対する、各種サイトカイン遺伝子の転写誘導活性を調べた。しかし、これらの2菌種間に有意なサイトカイン誘導活性は見られなかった。平成25年度は、各種腸内細菌の菌体を用いてパイエル版樹上細胞に対する各種サイトカイン遺伝子の転写誘導活性を調べた。その結果、バクテロイデス属細菌には菌種を問わずIL-23サブユニットp19遺伝子の強い転写誘導活性があることが示された。IL-23は自己免疫疾患や腸管炎症に関与すTh17細胞の分化を誘導するサイトカインであり、今回の乳幼児の前向き調査研究において、乳児期のバクテロイデスの定着と後のアレルギー発症に正の相関が見られたこととの関連性に興味が持たれる。
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日本醸造協会誌
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